研究課題/領域番号 |
21H04654
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
楊 金峰 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (90362631)
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研究分担者 |
成瀬 延康 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30350408)
中村 芳明 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (60345105)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 時間分解電子回折 / フェムト秒電子線パルス / 構造相転移 / 不可逆の構造変化 / 薄膜 |
研究実績の概要 |
1)フェムト秒時間分解電子回折による構造相転移過程の解析法の確立 ・フェムト秒電子線パルスの安定化を行った。具体的には、フェムト秒レーザーの発振器と再生増幅器の温度を独立に制御し、最適化するとこにより、レーザーの出力エネルギーとポインティングを共に安定化した。その結果、電子線パルス強度の変動は、目標である測定時間が1時間内では1%以下と達成できた。 ・高純度Pyolytic Graphite(PG)ヒーターを実装した加熱試料ホルダーを製作した。試料を最高600℃まで加熱することが実現でき、幅広い熱電材料等の熱励起による構造変化過程の測定が可能となった。これにより、熱電材料における構造相転移現象の解明や新な材料の創出が期待できる。 2)酸化物などの薄膜における熱や光励起の構造相転移過程の観測と構造ダイナミクスの解明 昨年度に製作したVO2薄膜における光誘起金属-絶縁体構造相転移過程をフェムト秒時間分解電子回折により測定した。光誘起による回折リングの強度変化を見ることができた。現在、励起レーザーの強度の依存性等を測定し、構造ダイナミクスの解析を実施している。 また、今年度で製作した加熱試料ホルダーを利用して、熱電材料として注目されているGeTeにおける熱励起による構造相転移過程の測定を試みた。200℃付近に多結晶を表す回折リングが消失し、単結晶の回折パターンが顕著に現れる現象を観察した。この現象は不可逆過程であった。今後、光励起の構造変化を測定し、構造相転移の詳細を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・フェムト秒電子線パルスの安定化を行い、加熱試料ホルダーを製作して、熱励起による構造相転移過程の測定法を確立した。熱と光励起の構造相転移の相違性を直接的に測定し、構造相転移ダイナミクスの本質的理解に期待できる。 ・不可逆の構造相転移の研究では、VO2薄膜において、熱励起による中間相であるT相の生成を初めて観察できた。この成果は、「Science and Technology of Advanced Materials, 24, 2150525(2022)」の雑誌で論文発表された。
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今後の研究の推進方策 |
1)マルチスケール計測・ユースケース開拓を行い、様々な研究対象を利用可能な結晶構造変化の解析法を開発する。 ・(ユースケースの開拓)加熱試料ホルダーを活用した熱励起による構造相転移過程の測定法を確立する。 ・(マルチスケールの計測)ナノ秒・マイクロ秒時間領域での電場励起の構造相転移過程の測定法を確立する。 2)熱、光又は電場励起による構造相転移過程を測定し、構造相転移ダイナミクスの本質的な解明を試みる。 ・そのために、測定対象として、熱、光又は電場励起による構造相転移を引き起し可能なVO2薄膜試料を厳選する。 ・また、熱電材料やナノマテリアルとして注目されているSi-GeやSi-GeTe、SnO2における結晶-アモルファス相転移現象の観察を行い、不可逆構造変化過程の解明を試みる。
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