研究課題/領域番号 |
21H04655
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石田 謙司 九州大学, 工学研究院, 教授 (20303860)
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研究分担者 |
北村 雅季 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10345142)
高嶋 一登 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (30435656)
小柴 康子 神戸大学, 工学研究科, 助手 (70243326)
堀家 匠平 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (00809486)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 心臓発電 / フレキシブル / 有機圧電薄膜 / 生体適合性 |
研究実績の概要 |
本年度は、超柔軟で生体内利用可能な圧電型発電フィルムの開発に向けて、生体適合素材である気相重合パリレンC薄膜を基板材として用いた超フレキシブル有機圧電センサーの作製に取り組んだ。気相重合したparylene C自立膜上に、下部電極としてAl薄膜100 nmを真空蒸着し、その後ポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレンランダム共重合体 (P(VDF/TrFE))をスピンコート成膜、上部にAl電極を形成することで強誘電キャパシタとした。体内でのデバイス保護、生体適合性を指向してパリレンCにてデバイス全体を封止した。パリレン封止した有機強誘電体において分極反転挙動(残留分極量Pr:60mC/m2)を確認した。また不具合のあった電気測定用プローバーを改良して高感度電気測定を行い、素子インピーダンス、分極反転電流の精密測定を行い、心臓発電に必要なインピーダンス整合や分極反転挙動に関する基礎データを蓄積した。1um程度の柔軟なパリレンC上に作製した有機圧電フィルムを3D心臓モデルに貼り付け、60bpmで拍動運動させた所、心臓モデルの収縮変形(右心室→左心室)、膨張変形(右心室→左心室)が明確に検出され、心臓モデル各心室の拍動検出が可能であることを示した。また、動物実験に向けて医学部教員との複数回のミーティングを行い、マウスを用いた動物実験を試行した。10mm程度のマウス心臓にフィルムデバイスを固定するためパリレン基板上にマスクレス露光機を用いた複雑な配線経路形成、レーザカッター加工等を通じて、マウス心臓への表面固定と配線取りだしを行った結果、3D心臓モデルよりも信号レベルが小さいものの、マウス心拍信号の取得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は生体内の筋肉や臓器の弱くて小さな力(変形)を電気変換して変位センシング/発電できる、超柔軟で生体適合性ある圧電型発電素子を開発することにある。本年度は、柔軟かつ生体適合性あるパリレンC基板上に有機圧電センサーを形成し、生体内への埋め込みを指向した有機圧電フィルム素子の形成に取り組み、その基礎検証に成功したと考える。併せて、医学部教員との情報交換を通じて、マウスを用いた動物実験に初めて取り組み、微弱ではあるもののマウス心臓に係留した有機圧電フィルムから、マウス心臓拍動に伴う信号検出に成功したことからも、本研究は概ね順調に成功していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験での適用に向けて有機圧電フィルムの構造最適化に取り組む予定である。初めて取り組んだ動物実験においてマウス心臓の位置/配置、寸法、表面性状について情報を得たので、これら生体条件に適した素子構造の工夫を行う。実心臓へのフィルム固定、配線状態、心臓動きへの影響などを総合的に検討し、デバイス構造を形成し、医学部教員の協力を経て動物実験を行っていく。併せて、マウスの心臓拍動による発電量を定量化するべく、回路検討を行う。また、回収した電力用途の1つとして投薬用生体内マイクロポンプを想定して、正圧電効果を用いたフレキシブル圧電ポンプの基礎検討も行う。
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