研究課題/領域番号 |
21H04656
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小嗣 真人 東京理科大学, 先進工学部マテリアル創成工学科, 教授 (60397990)
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研究分担者 |
大河内 拓雄 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 主幹研究員 (00435596)
平岡 裕章 京都大学, 高等研究院, 教授 (10432709)
三俣 千春 東京理科大学, 先進工学部マテリアル創成工学科, 客員教授 (70600542)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 磁区構造 / 自由エネルギー / 因果解析 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
今年度は、パーシステントホモロジーと機械学習と自由エネルギーを融合することで、「拡張型ランダウ自由エネルギーモデル」の基本原理を構築することができた。本モデルをLLGの磁区構造に適用することで、磁区構造の自動的な解釈を実行することができた。 磁区構造データは、保磁力や磁化反転など、省エネルギーな磁性体の機能を特徴付ける重要な情報となる。しかしナノスケールの磁性体では複雑な相互作用を示すため、人間の目ではメカニズムの理解や場所の特定がむずかしく、デバイス設計はトライ&エラーの繰り返しであった。 今年度の研究では、トポロジーとデータサイエンスを融合した「拡張型ランダウ自由エネルギーモデル」を作成し、磁区構造データの解釈を自動化することができた。具体的には、パーシステントホモロジーと呼ばれるトポロジーの概念を用いて、複雑な磁区構造を特徴量として抽出した。次に解釈性の高い機械学習を用いて、情報空間上に新たなエネルギーランドスケープを描画し、「拡張型ランダウ自由エネルギーモデル」を作成した。これによって、ミクロな磁区構造とマクロな磁化反転現象を階層を超えて双方向接続でき、さらには起源となる物理的相互作用を定量的に解析できる。 その結果、ナノ磁性体の磁化反転過程は、反磁界効果に支配されていることが明らかとなり、磁化反転を妨げているエネルギー障壁の空間的な集中を可視化することに成功することができた。本モデルは、物理学にねざした説明能力の高いAIモデルで、メカニズムが未解明なさまざまな材料に展開可能なものと期待される。成果はScientific Reports誌を始め5報の論文として纏められた。来年度はエントロピー項や実材料など、より現実的な系での応用研究を行い、解析手法の社会実装につなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度前期分の研究計画を2022年度内に実施することができており、論文成果も順調に発信できているため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はエネルギー項としてエントロピーの項を追加して解析する予定にしている。温度ステージおよび磁区構造計測システムの整備を行い、大規模磁区構造データの解析をおこなう。磁区構造からエントロピー項の解析をおこない、温度との積を取ることで自由エネルギーに算入する。拡張型ランダウ自由エネルギーのモデリングを行い、有限温度下における磁化反転機構の解析を実施する。
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