研究課題/領域番号 |
21H04658
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤原 航三 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (70332517)
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研究分担者 |
前田 健作 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40634564)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 固液界面 / 半導体 / その場観察 / 結晶粒界 |
研究実績の概要 |
本研究は、「各種半導体材料の固液界面ダイナミクスの基礎学術的理解の深化」を目的として実施している。2023年度は、単成分半導体であるSiの固液界面ダイナミクスに関して、{110}面と{100}面、また{110}面と{111}面の成長速度の違いについて実験的に明らかにした。また、{111}面の微斜面における成長メカメカニズムについても研究を開始した。さらに、固液界面における粒界の成長に関して、実験結果に基づいた新しいモデルの構築を開始した。 混晶半導体に関しては、Bi-Sb系合金に関して、固液界面不安定化に及ぼす組成の影響を実験的に明らかにした。 Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体に関しては、InSbの成長速度の異方性を明らかにするために、その場観察実験を行い、{111}A面と{111}B面の成長速度の違いについて検討を行った。これまでに両面の成長速度の違いはそれほど大きくないことが分かっているが、2024年度も引き続き実験を継続し、成長速度の大小関係を明確にしたい。 また、Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体であるCdTeの大型結晶作製に向けて、新しい結晶成長技術の開発を行っている。これまでに、20cm角の大型多結晶インゴットが得られている。今後、単結晶化へ向けて更なる技術開発を行う。 半導体の固液界面ダイナミクスの研究に関して、フランスの研究グループとの共同研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、単成分半導体、全率固溶型半導体、化合物半導体の固液界面ダイナミクスを明らかにすることを目的として実施している。現在までに、単成分半導体に関しては、Siの成長速度異方性を実験的に明らかにし、従来不明であった{110}面の成長に関して多くの知見が得られている。また、{111}面の微斜面の成長に関して、実験的証拠が得られており、今後、その成長メカニズムに関してモデルを提唱できる段階にある。さらに、結晶粒界の成長に関して、実験結果に基づいて新しいモデルを構築している。混晶半導体に関しては、Si-Ge系の固液界面ダイナミクスの研究に加え、Bi-Sb系でも実験を開始した。固液界面不安定化が生じる臨界成長速度の組成依存性を実験的に明らかにしている。化合物半導体に関しては、Ⅱ—Ⅵ族およびⅢ—Ⅴ族化合物半導体であるCdTeおよびInSbを対象に実験を行っており、前者では新しい大型結晶の成長技術開発が順調に進んでいる。後者では、{111}面の極性が成長速度に及ぼす影響に関して様々な実験を行っており、成長速度の違いに関して詳細な議論ができる結果が得られつつある。 以上のように、本研究では、各種半導体の融液成長メカニズムに関して多くの知見が得られており、さらに大型結晶の成長技術開発も進められている。よって、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
各種半導体の固液界面ダイナミクスの解明のために、引き続き、固液界面のその場観察実験を主体に研究を進めていく。当グループでは光学的な観察手法により固液界面の観察を行っているが、3次元的な観察のために、マルセイユ大学(フランス)の研究チームと共同で放射光施設を用いた実験も開始する。また、実験結果に基づいた成長モデルの構築において、理論研究者と協力して研究を進めていく。化合物半導体の研究に関しては、いくつかの企業が当グループの結果に注目しており、今後、共同研究に発展させる予定である。これまでに、特に大きな問題はなく順調に研究が行われているため、今後も当初の計画通りに研究を進めていきたい。
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