研究課題/領域番号 |
21H04659
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金森 義明 東北大学, 工学研究科, 教授 (10333858)
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研究分担者 |
松原 正和 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50450648)
岡谷 泰佑 東北大学, 工学研究科, 助教 (80881854)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 光デバイス / マイクロ・ナノデバイス / メタマテリアル |
研究実績の概要 |
テラヘルツ領域では光学素子に利用可能な材料が乏しく、加工容易かつ幅広い屈折率特性を有する新規材料が求められている。本研究では、自由な形状に形成可能かつ任意の屈折率特性を有するテラヘルツ光学素子の実現を目指し、光共振器を内包した粉末状の新たな光学材料の加工・形成手法を確立する。樹脂製粉末の中に波長(数十~数百μm)よりも小さな金属製光共振器を埋め込むと、粉末全体としての実効的な屈折率は樹脂と光共振器の特性の掛け合わせとなる。誘電率・透磁率特性の異なる粉末状光学材料を液状樹脂に攪拌し、型を用いて凝固させることで、任意形状かつ光共振器の設計に応じた屈折率特性を持つ光学物質(3次元バルクメタマテリアル)が形成される。 本年度は、電磁場解析シミュレーションを用い、樹脂粉末状に光共振器が埋め込まれた構造に関して光学応答の予測を試みた。光共振器としては昨年度設計した分割リング共振器とは異なるメタマテリアル共振器構造を新たに提案した。続いて、光共振器を含んだ樹脂粉末、及びそれらを凝固させた3次元バルクメタマテリアルの作製に取り組んだ。昨年度の結果を踏まえ、光共振器を包含した樹脂粉末と3次元バルクメタマテリアルの作製法を改良し、より安定的な製作方法の確立と歩留まりの向上を達成することができた。試作結果として立方体型の樹脂粉末内に光共振器を形成することに成功した。また、それらを凝固した3次元バルクメタマテリアルを作製し、顕微鏡観察から樹脂バルク内に光共振器がランダム配向していることを確認した。テラヘルツ時間領域分光法を用いた分光計測により得た実効屈折率はシミュレーションによる予測と概ね一致し、光共振器を埋め込むことで樹脂単体とは異なる特性を発現できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の結果を踏まえ、光共振器を包含した樹脂粉末と3次元バルクメタマテリアルの作製法を改良し、より安定的な製作方法の確立と歩留まりの向上を達成することができた。また、光学設計の観点においても、昨年度試作した分割リング共振器とは異なる形状のメタマテリアル構造を実現することができ、3次元メタマテリアルのラインナップを増やすことができた。また、本研究成果は学会発表およびMEMS関係の講演として発表した。本年度で確立した技術は翌年度以降の研究の基盤となる有用な知見である。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、今後も継続して以下の研究を進める。 樹脂粉末内部に光共振器を形成することを想定し、電磁場解析シミュレーションソフトウェアを用いて光共振器を内包するメタマテリアル単位構造の形状および寸法設計を行う。今後は、より高い屈折率変調を目指し、新たなメタマテリアル構造を設計する。 設計したメタマテリアル構造を粉末化し、その後、3次元バルクメタマテリアルを製作する。作製プロセスで用いる装置群は、東北大学マイクロ・ナノマシニング研究教育センターの設備を利用する。製作した光共振器およびメタマテリアル単位構造の実寸評価には、高分解能SEM、原子間力顕微鏡、超高精細デジタルマイクロスコープ等を利用する。 形成した3次元バルクメタマテリアルの屈折率特性を評価するため、テラヘルツ汎用分光装置を用いて、テラヘルツ領域における反射・透過スペクトル計測を行う。 実現した3次元バルクメタマテリアルを用いて光学素子を作製し、その光学特性を評価する。
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