研究課題/領域番号 |
21H04662
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅原 康弘 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40206404)
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研究分担者 |
李 艶君 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50379137)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 近接場光学顕微鏡 |
研究実績の概要 |
1)近接場光の最適観察条件の理論的検討 近接場光を高分解能に測定するために制限している因子(例えば、近接場光から力への変換効率や、カンチレバーの熱振動や変位検出計の雑音、カンチレバーのバネ定数や共振周波数、振動振幅などの測定条件)を理論的に検討し、近接場光を力として高分解能に測定するための条件を求めた。 2)カンチレバーの変位検出計の低ノイズ化 近接場光を高感度に測定するため、カンチレバーの変位検出計を低ノイズ化した。具体的には、現有の変位検出計では、光源のモードホップノイズが検出感度を制限しているので、低コヒーレンスの半導体レーザを導入し、変位検出計の低ノイズ化を実現した。 3)光変調振幅の超安定な光照射系の実現 近接場光を高感度に測定するためには、探針・試料間に照射する光の変調振幅を一定に保ち、カンチレバーの周波数シフトに現れる変調成分をロックインアンプで検出する必要がある。そこで、不要反射を極限まで低減し、光変調振幅の安定な光照射系を構築した。 4)近接場光の最適観察条件の実験的検討 近接場光を最も高感度に測定するための条件を実験的に検討した。具体的には、光誘起力の探針・試料間距離依存性を測定し、数値計算により、様々なバネ定数や振動振幅のカンチレバーに対する光誘起力の探針・試料間距離依存性を導出する。この距離依存性に対して信号対雑音比を求め、最も高感度になるカンチレバーのバネ定数や共振周波数、振動振幅を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に示すように、当初の研究計画通りに研究を推進することができており、おおむね順調に進展していると判断できる。 まず、近接場光を高分解能に測定するために制限している因子(例えば、近接場光から力への変換効率や、カンチレバーの熱振動や変位検出計の雑音、カンチレバーのバネ定数や共振周波数、振動振幅などの測定条件)を理論的・実験的に検討し、近接場光を力として高分解能に測定するための条件を求めることができた。 また、近接場光を高感度に測定するため、カンチレバーの変位検出計を低ノイズ化した。具体的には、低コヒーレンスの半導体レーザを導入し、変位検出計の低ノイズ化を実現することができた。 さらに、近接場光を高感度に測定するため、不要反射を極限まで低減し、光変調振幅の安定な光照射系を構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)有機分子の分子軌道に影響しない原子レベルで平坦な絶縁性表面の作製 単一分子を効率的に光照射するため、金属探針と金属基板(ギャップモード)による増強電場を用いる。また、有機分子の分子軌道が、金属基板の電子状態と混成しないようにする必要がある。そこで、Ag(001)表面上に2原子層の絶縁性ペンタセン分子薄膜を形成した基板を作製する。 2)近接場光学顕微鏡の超高感度・超高分解能観察の実証 物質表面の構造と局在する近接場光の分布を原子スケールでより超高感度・超高分解能に観察できることを実証する。試料としては、ペンタセン分子薄膜/Ag(001)基板上に吸着させたフラーレン分子を取り上げる。金属探針としては、金(Au)コート探針を用いる。 3)非励起状態における単一分子の骨格構造と誘起分極パターンの解明 ペンタセン分子薄膜/Ag(001)基板上に吸着させたフラーレン分子のσ軌道やπ軌道が、非励起状態において、どのように撮像されるかを実験的・理論的に検討し、画像化機構を検討する。 4)有機分子を用いた画像化機構の検討 フラーレン分子や銅フタロシアニン分子のσ軌道やπ軌道が、様々な光の波長に対して、どのように撮像されるかを実験的・理論的に検討し、画像化機構を解明する。
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