研究課題/領域番号 |
21H04663
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
的場 修 神戸大学, 次世代光散乱イメージング科学研究センター, 教授 (20282593)
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研究分担者 |
湯川 博 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任教授 (30634646)
玉田 洋介 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (50579290)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 生体深部イメージンング / 量子ドット / 蛍光イメージング |
研究実績の概要 |
令和3年度から進めている偏光依存性のある偏光ディレクトフラットレンズおよび偏光回折格子を用いた異軸型共通光路蛍光ディジタルホログラフィーについて研究を進めた。直径10 umまたはそれ以下の蛍光ビーズを用いて同軸型ホログラムの記録に成功しているが,視野全体に均質なホログラムが得られておらず,再構成結果が十分でない。そのため,干渉性の高いレーザー光源を併用して課題解決に取り組んでいる。また,深部照明技術には高速2値位相変調型空間光変調素子を用い,高速3次元光スポットパターンを生成した。高速2値位相変調型空間光変調素子は最高速度5000フレーム毎秒で2048x2048画素の2値位相分布を表示可能である。100個のスポットを作成したときに,スポット強度分布のピーク強度値に対する標準偏差の大きさは15%程度に抑えられることが分かった。研究分担者の湯川は,令和3年度に作製した赤外光によって2光子励起され,バイオイメージングによく用いられる黄色や赤色蛍光タンパク質の蛍光とほぼ同じ波長域に発光中心を持つ量子ドットを用いて,量子ドット近傍にある蛍光タンパク質の劣化画像復元のための高輝度基準光源としての有用性を検証した。また,蛍光性量子ドットと蛍光タンパク質の2光子励起で用いる近赤外光と同じ波長で1光子励起に応答する2種類の量子ドットを作製した。さらに,的場と緊密に連携し,本量子ドットを用いて新規3次元蛍光イメージング技術を元に,深部集光のための高輝度基準光源としての有効性検証を開始できた。的場と玉田は引き続き,コケ植物ヒメツリガネゴケの生細胞に対してより効率的にガラスナノキャピラリーを挿入するための実験系を検討した。また,ヒメツリガネゴケにおける幹細胞運命転換の鍵因子の有力候補を同定した。深部イメージングの対象として,この因子の蛍光タンパク質標識株の作出に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,生体深部に導入した蛍光性量子ドットと蛍光タンパク質を選択的に励起し,量子ドットによる蛍光の劣化情報を利用して蛍光タンパク質の劣化画像を改善することを目指している。バイオイメージングによく用いられる黄色や赤色蛍光タンパク質の蛍光とほぼ同じ波長域に発光中心を持つ量子ドットを開発し,量子ドット近傍にある蛍光タンパク質の劣化画像復元のための高輝度基準光源としての有用性を検証することに成功している。また,量子ドットから蛍光の散乱による劣化画像を取得するためのアプローチとして蛍光ディジタルホログラフィーとライトフィールドイメージングの研究も進展させている。さらに量子ドットと蛍光タンパク質を選択的に励起できる照明技術の開発も進めている。以上の結果からおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
生体内部に親和性の高い量子ドットを導入する方法について検討する。ナノインジェクション技術などによるヒメツリガネゴケ生細胞への量子ドットの導入,および幹細胞運命転換の鍵因子候補を蛍光タンパク質にて標識した遺伝子組換え株の作出と観察に向けた研究を継続する。量子ドットをヒメツリガネゴケ生細胞に注入した後,その蛍光を用いた散乱画像取得実験を行う。生きた植物または動物細胞において量子ドットを選択的に励起し,散乱により劣化した蛍光画像を取得する。この劣化情報を用いて,照明技術と併せて周辺にある蛍光タンパク質を照明し,劣化した蛍光画像を取得する。この2つの劣化画像から蛍光タンパク質画像の回復を試みる。劣化蛍光画像としては,強度のみならず,振幅及び位相情報または,光線の伝搬方向を取得する。これら多次元的な計測により劣化画像の画像回復を改善することに取り組む。
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