研究課題/領域番号 |
21H04665
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 衡平 九州大学, 工学研究院, 教授 (10283491)
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研究分担者 |
森 昌司 九州大学, 工学研究院, 教授 (10377088)
林 灯 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 教授 (60443214)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 水電解 / 沸騰重畳 / 三極セル / 酸素発生反応 / 水素発生反応 |
研究実績の概要 |
申請者は水電解に沸騰を重畳させ、水電解水素製造効率を10%向上する。種々条件を調整すれば、水電解装置を100℃付近で運転でき、この時、沸騰が電極上で起きる。沸騰気泡内の水蒸気圧力は周囲の水に比べて高く、高圧水蒸気によって電極上への水分子の吸着、すなわち電極反応の最初の素過程が加速的に進み、電解電圧が低減し、水電解効率が向上すると考えられる。そこで本申請では、水電解に沸騰を重畳できる水電解電極を構築し、電極微細構造や運転条件等が沸騰重畳効果に及ぼす影響を定量化し、電圧低減メカニズムを明らかにし、理論モデルをツールにして沸騰重畳効果を最大化する水電解装置を開発して水電解効率10%向上を達成する。 2021年度は、まず、ヒーター組込型作用極(WE)を開発し、これをもちいて、酸素発生反応(OER)に対する沸騰重畳効果を検証した。高分子電解質膜をもちいる実セルでは熱操作性が悪いが、模擬系ながら、三極セル、WEに組み込んだヒータ加熱をもちいて、OERに対する沸騰重畳効果を明確に検証できる。段階的に、人工的に物質輸送抵抗が大きくなる3つのWEを準備し、検証した。その結果、沸点を超えると、OER過電圧が減少した。また、物質輸送抵抗の大きいWEほど、沸点でのOER過電圧の低減が大きいことがわかった。沸騰によって、生成物である酸素の、あるいは反応物であつ水の輸送促進が促されることが示唆された。 2021年度では、さらに、同じ実験系をもちいて、水素発生反応(HER)における沸騰効果も検証した。HERにも沸騰効果が見られたが、OERに比べてその効果が、小さいことがわかった。HERの場合、反応物であるプロトンが、電極沖合の電解液みならず、電極を構成するアイオノマーからも供給される。そのため、沸騰が物質輸送促進が生成物である水素ガスのみ影響するためだと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3極セル及び、開発したヒーター組込型作用極により、酸素、水素発生反応における沸騰効果をそれぞれ、明確に示すことができた。また、その一部を、トップ10ジャーナルであるInt. J. Hydrogen Energyにも掲載できた。以上をもって、おおむね順調に進展している、と判断した。 なお、当初計画した、酸素発生反応OER電極へのぬれ性制御による沸騰促進と、沸騰効果の増大については一部を翌年度以降に持ち越すことにした。OER電極に、PTFE微粒子を担持量を変えながら混合し、OER特性を検証した。沸騰効果そのものは増大、すなわち沸騰開始温度の低下によるより低温での沸騰効果、また電圧低減は大きくなった。しかし、PTFE粒子が電子絶縁性を有するためオーム抵抗が大きくなり、そもそも、沸騰開始前の電解電圧が増大してしまった。この点が反省点である。
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今後の研究の推進方策 |
上で示したように、単純に、PTFE粒子を電極に混合して沸騰促進し、沸騰効果を増大させる効果は失敗に終わったので、来年度以降、電極内のオーム抵抗を増大させず、ぬれ性効果を制御する方法を検討する。電極(あるいは触媒層、CL)へのぬれ性制御とせず、CLに隣接する多孔質輸送層(PTL)にぬれ性を、パターン状に付与し、電子輸送性を確保しつつ、エッジ効果により沸騰促進し、沸騰重畳効果の増大を目指す。
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