研究課題
中性子は軽元素イメージングに適するミクロン級分解能撮像の実現のために、メゾ組織の中性子透過能差を撮像できる10B転換層付超伝導中性子検出器CB-KIDを開発することを計画した。遅延時間型CB-KIDは既存の検出器と比べて特徴がある。すなわち、気体の放電、固体の電子-ホール解離、シンチレータ光を利用する従来技術では数千ボルトの高電圧を必要とし、検出器計測系サイズも大きく動作速度も遅くなる。3Heガスは戦略的物質として入手が困難となっている。CB-KIDは、中性子イベントにより発生する電圧パルスを減衰の少ない超伝導細線導波路に沿って超高速伝搬させ、伝送時間をサブナノ秒の分解能で計測するものであり、バイアス電圧は数ボルトで動作し、わずか八系統の読出であり、検出器材料も入手容易で、放射線耐性もある。①時間デジタル変換回路改良、②対向式八端子検出器化による信号放出位置同定精度向上、③10B転換層厚膜化による検出効率改善、④検出器動作温度最適化による検出効率改善により、現行CB-KIDに比べて位置分解能と検出効率の性能向上を図ることを掲げた。2021年度は、①に関しては、サブナノ秒動作回路に関して予備的な検討を行った。②に関しては、PHITSによるシミュレーションにより八端子CB-KIDの構成の最適化を検討した。③に関しては220nm膜厚の10B転換層の成膜に成功した。④に関しては動作温度を5.0Kに固定する条件での研究に集中した。八端子CB-KIDの製作については、産総研CRAVITYを活用した素子製作の可能性を検討した。また、超伝導検出器を用いるが、クライオスタットの最適設計により室温条件下の試料の中性子イメージングに着手した。
2: おおむね順調に進展している
①時間デジタル変換回路改良に関しては、サブナノ秒動作回路に関して予備的な検討を行った。②対向式八端子検出器化による信号放出位置同定精度向上に関しては、PHITSによるシミュレーションにより八端子CB-KIDの構造の最適化を検討できた。③10B転換層厚膜化による検出効率改善に関しては、220nm膜厚の10B転換層の成膜に成功できた。④検出器動作温度最適化による検出効率改善に関しては、その前提となる動作温度を高精度安定化の研究に取り組み温度精度5K±0.5mKの温度安定性を実現できた。加えて、⑤八端子CB-KIDの製作については、産総研CRAVITYを活用した素子製作の可能性を検討できた。⑥超伝導検出器を利用するため極低温を用いるが、クライオスタット改造によ室温試料の中性子イメージング実現のための研究に着手できた。
中性子は軽元素イメージングに適するミクロン級分解能撮像の実現のために、メゾ組織の中性子透過能差を撮像できる10B転換層付超伝導中性子検出器CB-KIDを開発する計画を更に推進する。今後は、①時間デジタル変換回路改良に関しては、30psで動作する電子回路の実機予備テストを含め、その実現を目指す。②対向式八端子検出器化による信号放出位置同定精度向上に関しては、新素子作製のための新レチクルを製作する。次いで、産総研Qufab(Cravityから改称)施設に八端子素子製作を委託する計画である。③10B転換層厚膜化による検出効率改善に関しては膜厚を1000nmに高めた10B転換層の実現を目指す。④検出器動作温度最適化による検出効率改善に関しては、動作温度の超安定化状態で動作温度をパラメーターとして系統的調査を実施することで検出効率の改善を目指す。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件)
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