研究課題/領域番号 |
21H04673
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五神 真 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70161809)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 光物性 |
研究実績の概要 |
A.層状半導体を対象とした高密度励起状態の光電子分光測定: 層状半導体であるGaSeを対象とした光励起状態の光電子分光を進めた。GaSeの光励起状態においては励起子が形成され、かつ高強度に光励起した場合には励起子状態から電子正孔プラズマ状態に遷移するモット転移が生じると分光測定から報告されている。しかし励起子から電子正孔プラズマ状態に遷移する際に生じる励起電子の変化を光電子分光等の手法を用いて直接的に見た実験報告は未だない。本年度我々は、モード同期レーザーを光源として使用したポンプ・プローブ光電子分光測定(ポンプ光2.95 eV プローブ光5.9 eV)を行なった。そこで、GaSeの光励起状態の光電子信号を取得することに成功した。さらに再生増幅器を光源としたポンプ・プローブ光電子分光測定(ポンプ光3.2 eV プローブ光6.4 eV)を実現し、GaSeの光励起状態についてより広範囲な光強度での信号取得を可能にした。さらに光電子分光を用いた電子正孔系の観測について、理論的な観点からどのような状態観測が信号として得られるかの議論を深めた。 B.3次元半導体を対象とした測定: 3次元半導体の典型物質である亜酸化銅を対象としたポンプ・プローブ光電子分光測定を目標とし、本年度は光電子分光測定に向けて試料の予備測定を行なった。亜酸化銅励起子発光の時間分解測定を行い、励起子寿命などの基礎的なパラメータを取得した。 C.光触媒物質を対象とした測定: 本年度は代表的な光触媒物質であるTiO2TiO2をテストターゲットとして、アニールなどの条件出しを進めた。 D.光源開発: 我々が開発している誘電体ナノメンブレンを用いた真空紫外領域における円偏光3倍波発生法は光電子分光用の光源として期待される。本年度は本手法によって光電子分光に適した波長領域での紫外光発生を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目Aについては、目標としていたGaSeの光励起状態を光電子分光によって観測することができた。従来は発光観測でのみ議論されてきたモット転移を、光電子分光測定によって観測する目的のために高強度励起が可能な光源での光電子分光測定を実現できた。さらに、光電子信号において電子正孔系の相関がどのように現れるかについて、理論的な側面から解き明かすことができるようになった。 項目BとCについては、目標としている光電子分光測定に先立って必要な条件出しを着実に進めることができた。 項目Dについては、光電子分光の新規光源として活用するために、実験的に必要な条件を確認できた。
以上の点を総合して、当初の計画どおり進められているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
項目Aについては、引き続きGaSeを対象とした光電子分光測定を進める。具体的には再生増幅器を用いた高強度な光励起による、高密度電子正孔系の光電子分光測定を進める。その際、より高いエネルギー分解能を実現するために光電子分光特有の空間電荷効果などの問題がどの程度非占有状態観測に影響を与えるかを確認する。また、従来の光物性実験で用いられてきた発光観測と照らし合わせるために、光励起したGaSeからの発光についてストリークカメラを用いた時間分解分光を並行して行い、励起子寿命などの基礎的なパラメータを取得する。 項目BとCについては、引き続き光電子分光測定を実現するために必要な試料の条件出しを行う。また、半導体や絶縁体特有のチャージアップの問題についての解決策を検討する。 項目Dについては、光電子分光測定に光源を導入するために必要な光学系の構築などを設計する。
以上を今後の推進方策とする。
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