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2021 年度 実績報告書

液体を反応場とした動的オペランド硬X線光電子分光システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21H04677
研究機関分子科学研究所

研究代表者

横山 利彦  分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 教授 (20200917)

研究分担者 小板谷 貴典  分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (60791754)
山本 航平  分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (30844823)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2024-03-31
キーワード光電子分光 / 化学反応 / 固液界面 / 気液界面 / シンクロトロン放射光
研究実績の概要

今年度は、固液界面測定システムの設計および備品調達を実施した。また、これと並行して、固気界面における水素吸蔵過程および不均一触媒反応のオペランド分光を実施した。
1. 固液界面の硬X線光電子分光測定(HAXPES)を可能にするため、測定真空槽・測定セル・試料マニピュレータの設計と作製を行い、さらに、反応活性評価用のガスクロマトグラフを導入した。また、液体ジェットを用いた時間分解測定のため、0.1マイクロメートル精度でノズルの位置調整が可能な高分解能Zステージの開発も行った。
2. オペランドHAXPES研究の準備実験として、固気界面におけるパラジウム合金試料への水素吸蔵過程および銅-亜鉛系触媒を用いたメタノール合成のその場観察雰囲気制御HAXPES測定を実施した。測定はSPring-8硬X線アンジュレータステーションBL36XU理研専用ビームラインにおいて、当研究室で設計・構築した大気圧硬X線光電子分光システムを用い、年間で5回(各4~5日)のビームタイムをいただき、十分に実施することができた。具体的な成果として、水素雰囲気下でパラジウム合金試料の内殻光電子分光を実施して、金属-ヒドリド相転移に由来する内殻準位シフトを明瞭に観測することに成功した。また、二酸化炭素と水素の混合ガス雰囲気において加熱した銅-亜鉛系触媒のHAXPES測定を行い、メタノール合成が起こっている条件での光電子分光観測に世界で初めて成功した。現在得られた成果を論文としてまとめている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナウィルスの世界的な蔓延による物流の乱れや半導体不足の影響により、研究に必要な備品の準備に想定よりも時間がかかっている。

今後の研究の推進方策

2022年度は固―液界面のオペランド分光測定のビームタイム申請を行い、以下に示す2種類の測定のための装置の立ち上げを実施したのち、固液界面あるいは気液界面における化学反応の実測を進めてゆく。
(i) 静的なオペランド硬X線光電子分光測定システムの開発
静的なオペランド硬X線光電子分光測定システムを実際に立ち上げる。固体反応場としての試料平板を液体試料に接触してメニスカスを形成することにより液体超薄膜を作成し、この固液界面あるいは液中での触媒反応をオペランド分光測定する。また、ポテンショスタットを用いて電極電気化学反応のオペランド分光測定を実施する。電極触媒の化学状態のみならず、液相光電子シグナルを調べることにより、反応雰囲気中における界面電気二重層の直接観測を実施する。
(ii) 動的反応条件下における時間分解オペランド分光測定システムの開発
引き続き液体の流れを利用した時間分解光電子分光測定を実施するための測定システムを開発する。昨年度は液体マイクロジェットの位置を精密制御可能なマニピュレーターの開発および作製を行った。今年度においてはジェット発生用のマイクロノズルを開発、ジェット発生に関するテストを行った後、実際にHAXPES装置にインストールして液体マイクロジェットの光電子分光測定を行う。ジェットの任意の位置に硬X線を照射して光電子分光測定を行う。液体試料だけでなく気相に脱離した反応生成物も光電子分光で検出も行う。通常発生する液体ジェットの速度は5~100m/sであり、硬X線スポットサイズ(20μm)に対応する空間分解能で液体ジェットの分光が可能であるため、ジェット速度5m/sでの時間分解能は6μsとなる。気体分子の液体試料への吸着あるいは吸収など、基本的な素過程を含めた気液界面化学反応のキネティクスの追跡を実施する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Sulfur Poisoning Pt and PtCo Anode and Cathode Catalysts in Polymer Electrolyte Fuel Cells Studied by Operando Near Ambient Pressure Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy2021

    • 著者名/発表者名
      S. Chaveanghong, T. Nakamura, Y. Takagi, B. Cagnon, T. Uruga, M. Tada, Y. Iwasawa and T. Yokoyama
    • 雑誌名

      Phys. Chem. Chem. Phys.

      巻: 23 ページ: 3866-3873

    • DOI

      10.1039/D0CP06020H

    • 査読あり
  • [学会発表] Operando observation of working polymer electrolyte fuel cell studied by ambient pressure hard X-ray photoelectron spectroscopy2021

    • 著者名/発表者名
      Toshihiko Yokoyama
    • 学会等名
      Pacifichem2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Ambient Pressure Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy on Polymer Electrolyte Fuel Cells under Working Conditions2021

    • 著者名/発表者名
      Toshihiko Yokoyama
    • 学会等名
      MRM2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Operando observation of heterogeneous catalysts by near ambient pressure X-ray photoelectron spectroscopy2021

    • 著者名/発表者名
      Takanori Koitaya
    • 学会等名
      2nd IMS-SKKU-UJN Symposium on Chemical Catalysis
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 雰囲気光電子分光法によるパラジウムー金合金の水素吸蔵過程のリアルタイム観測2021

    • 著者名/発表者名
      小板谷貴典、山本達、松田巌、吉信淳、横山利彦
    • 学会等名
      2021年日本表面真空学会学術講演会
  • [備考] 電解質の電位を測る: 気体存在下の光電子分光

    • URL

      https://www.ims.ac.jp/publications/letters85/85_3.pdf

  • [備考] Exploitation of Novel Spectroscopic Methods ...

    • URL

      https://www.ims.ac.jp/about/publication/ann_rev_2021/2021yokoyama.pdf

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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