研究課題/領域番号 |
21H04692
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大北 英生 京都大学, 工学研究科, 教授 (50301239)
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研究分担者 |
KIM HYUNGDO 京都大学, 工学研究科, 助教 (80837899)
玉井 康成 京都大学, 工学研究科, 助教 (30794268)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 結晶性共役高分子 / 非晶性共役高分子 / 界面電荷移動状態 / ヘテロ接合界面 / エネルギーカスケード / 縮環系共役分子 / 一重項励起子 / 凝集状態 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、以下の研究項目ついて検討し、後述するような成果を挙げた。 【エントロピー効果】状態数の多い電荷状態を実現するには結晶性・凝集性が重要となるので、結晶性の異なる共役高分子として非晶性のPCDTBTおよび結晶性のPTzBTとフラーレン誘導体PCBMを用いたブレンド膜をヘテロ接合界面場として検討した。これらの系に対して微弱な界面電荷移動(CT)吸収帯を励起し、励起子拡散をともなわない電荷生成ダイナミクスを観測したところ、非晶性のPCDTBT/PCBMでは電荷解離効率が高々70%程度であるのに対して、PTzBT/PCBMではほぼ100%の高効率電荷解離が実現していることを明らかにした。 【エンタルピー効果】ヘテロ接合界面においてエネルギーカスケード構造を有する二元ブレンド系として、側鎖構造の異なるPTzBT-BOHDならびにPTzBT-12ODとフラーレン誘導体PCBMを用いたブレンド膜を検討した。その結果、主鎖構造が同じであっても側鎖構造を精緻に設計することにより、ヘテロ接合界面に生成する界面CT状態のエネルギー準位を制御できることを明らかにした。開放電圧に明確な違いをもたらす要因であることを明らかにしたので、電荷生成に与える影響についても検討を進める。 【自発的対称性の破れ】縮環系の共役が発達した分子に対して凝集状態に応じた発光寿命測定を行い、励起子発光成分以外の長寿命発光成分があるか系統的に検証するため、近赤外領域において100 ps以下の時間分解能を有する蛍光寿命測定システムを構築した。縮環系の共役が二次元状に発達した分子YS2およびYS3を用いて励起子ダイナミクスを検討したところ、他の一次元状縮環系分子に比べて一重項励起子が長寿命であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、結晶性の異なる共役高分子/フラーレンブレンド膜について界面電荷移動吸収帯の直接励起による電荷生成ダイナミクスを観測し、電荷解離効率が結晶性に大きく依存することを明らかにすることができた。また、ヘテロ接合界面におけるカスケード構造が共役高分子の側鎖構造により制御可能であるという興味深い現象についても実証することができた。縮環系共役分子の励起子ダイナミクスについては、時間分解能の高い近赤外発光寿命測定装置の整備が完了し、系統的な実験をすでに開始している。このように、当初計画どおり着実な進展が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初計画通りに研究を推進する予定であるが、研究分担者のみならず研究協力者との連携を強化することにより研究の展開を加速する。特に、新規材料を導入することにより検討できる範囲を拡大することができるので、本研究の展開に資する共同研究の実施については積極的に進めていく。
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