研究実績の概要 |
従来の線状構造を持つ高分子からなる材料の特徴は、分子鎖の絡み合いによる凝縮状態の形成である。それに対し、超分岐高分子(hyperbranched polymer, HBP)は線状高分子に比べて絡み合いが少ないと共に、末端基の数が多い構造的特徴を持つ。そこで本研究では、多数存在する末端基間での分子間相互作用を利用した高分子凝縮状態形成機構に基づく、高分子材料創製の新たな方法の実現を提案している。鍵となる技術が、研究代表者が最近開発した、有機テルル化合物を用いるリビングラジカル重合を用いる構造制御と実用性とを兼ね備えたHBP合成法である。本研究ではその技術を基盤として、1)HBPへの機能基・官能基の付与と構造の多様化によるHBP合成の深化と新しいHBP分子群の創製、2) HBPの凝縮状態や高分子一分子の3D構造と物性・機能の解明、3) HBPの特徴を活かした材料開発、について以下の取り組みを行なった。その詳しい内容は以下の通りである。 1) 本研究で用いるHBP合成法がリビング重合であることを利用して、成長末端に機能基・官能基の導入を行う。特に、有機テルル基の光活性化により発生する重合末端ラジカルを官能基導入したTEMPO誘導体によって捕捉による末端官能基化を行った。さらに、末端変換HBPにおける末端基の効果をより明確にするため、HBPをマクロ開始剤として用いてHBP-線状構造を持つブロック共重合体の合成を行なった。 2) 両親媒性HB-線状構造を持つブロック共重合体の水溶液中による会合状態の構造とダイナミクスについて、光散乱と放射光小角X線散乱により解明を行い、分岐構造が会合体の構造を決める重要なパラメータであることを明らかにした。
|