研究課題/領域番号 |
21H04694
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安田 琢麿 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 教授 (00401175)
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研究分担者 |
吾郷 友宏 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90466798)
原田 拓典 大分大学, 理工学部, 准教授 (80581339)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | エキシトニクス / 発光 / 励起子 / スピン変換 / 発光ダイオード |
研究実績の概要 |
本研究は、電子・正孔が再結合した過渡的状態としての準粒子であるエキシトンを光機能担体として深化させ、その高度制御に基づく新たな有機エキシトニクス技術の確立と革新的発光機能・デバイスの実現を目指すものである。従来概念では、電子-正孔対に相当するエキシトンは、励起状態で全スピン角運動量が固定されている閉殻系分子に局在したエキシトンを対象とした学理を基盤とするものであった。本研究は、従来概念からは一線を画す革新的な有機エキシトン制御・利用技術の開拓とともに、新世代有機エキシトニクスに資する基盤技術の確立を目的としている。 今年度は主に、高速スピン変換可能な有機発光材料の探索とスピン混成状態からの発光(重畳蛍光)の実証について検討を行った。一般に有機発光材料に用いられる第一・二周期元素に加え、第三・四周期の非金属元素による電子的摂動を活用し、スピン軌道相互作用を劇的に高めた新規発光材料の開発に成功した。量子化学計算の結果から、第三周期元素の導入により、一重項-三重項エネルギーギャップの低減に加えて、両励起状態間のスピン軌道相互作用が大幅に増強できることが明らかとなった。また、発光特性の評価から、約100%の発光量子収率の強い青色発光を示すことが分かった。さらに、過渡発光特性においてはほぼ単一成分の発光が観測された。これは従来の熱活性化遅延蛍光の挙動とは全く異なるものである。励起一重項と三重項状態の間の超高速スピン変換を先駆けて実現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高速スピン変換可能な有機発光材料の新たな設計指針を確立し、実際にスピン混成状態からの高効率発光(重畳蛍光)を先駆けて実証することができた。このようなエキシトンダイナミクスは前例がなく、従来技術を凌駕する新たな発光機構として今後の発展が大いに期待できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
基盤となる材料設計指針は確立できていることから、今後は量子化額計算などを駆使したハイスループットスクリーニングを実施し、系統的な超高速スピン変換発光材料のライブラリーの構築を進める。これにより、開拓した新たなエキシトンダイナミクスの普遍性と有用性を実証していく。
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