研究実績の概要 |
本研究は、電気二重層キャパシタの高エネルギー密度化を目指し、静電容量を増大させる新しい指針として「インターカレーション静電容量」を提案するものである。具体的にはMXene(マキシン)と総称される層状化合物を研究対象とする。MXeneは、層間ナノ空間に挿入されたイオンが電気二重層を形成し、インターカレーション静電容量を与える。これまでの応募者の研究で、層間ナノ空間に共挿入された電解液の溶媒分子が外部電場を過剰遮蔽し、静電容量を大幅に増大することが明らかとなっていた。 2021年度においては、MXeneの電子状態・構造状態、表面官能基、電解液溶媒分子の性質、イオン種、濃度、などのインターカレーション静電容量を支配すると考えられる因子の膨大な数に及ぶ組み合わせに対して、まず、MXeneの表面官能基を制御して化学的状態を制御する手法の開発を行った。通常のフッ酸を用いる手法ではなく、溶融塩を用いる手法によりMXene合成を行い、表面官能基を完全に制御することに成功した。その表面官能基の種類は、-F, -Cl, -Br, -I, -O, -OHなど多岐に渡っており、表面官能基が電極特性に与える影響を実験的に評価する基盤技術を確立することに成功した。 また、並行して表面官能基を制御したMXeneが示す電気化学特性を予測するために、理論計算を行った。水系電解液で与える静電容量を比較したところ、表面官能基の電気陰性度が低いほど電気二重層の厚さが薄くなり、単位面積当たりの静電容量が大きくなることが分かった(T. Shimada, et al., Chem. Mater. 2022, 34, 2069)。
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