研究課題/領域番号 |
21H04703
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大森 建 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50282819)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
|
キーワード | ポリフェノール / フラボノイド / オリゴマー / ケミカルスペース / アヌレーション |
研究実績の概要 |
本年度の研究においては、1)フラボノイドオリゴマーの合成に必要なモノマー単位の効率合成法の開発、2)複雑な分岐構造をもつ二重連結型フラバンオリゴマー、parameritannin A2の全合成研究、3)剛直な大環状構造を有するクラウンプロシアニジン類の全合成研究、4)マイクロフローミキサを用いた、直鎖型フラバンオリゴマーの効率的合成技術の開発の4点に関し、集中的に検討を進めた。 まず、1)の検討に関しては、フラバン骨格中のフェノール性水酸基が異なる保護基により区別された誘導体の効率的な合成経路の開拓を行った結果、光学活性なグリシドールを出発化合物とした簡便かつ効率的な合成経路を確立することができた。次に2)に関しては、フロログルシノールとジオキシ基を有するフラバンモノマーを1:2の比で反応させ、一挙に2つの二重連結構造を構築する方法を見出した。さらにPummerer反応とFriedel-Crafts反応のカスケードプロセスによる新規フラバン骨格構築法を開発し、parameritannin A2の初の全合成に成功した。一方、3)の検討に関しては、一般に形成が難しい、フラバン単位の4位と6位間の連結を可能とする手法を見出した。具体的には、求核成分として用いるフラバン単位のA環部(ベンゼン環部)のフェノール性水酸基を無保護としたうえで、副反応を抑えるために同ベンゼン環部の8位に塩素原子を導入した(8位をクロロキャップした)フラバン誘導体を用いると、望む位置でのみ反応を進行させることができることを見出した。そして4)の検討に関しては、従来のフラスコを用いたバッチ反応に比べ、より効率的なマイクロミキサを用いたフロー法に基づくオリゴマー化技術の開発に成功し、新技術として特許を出願した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、並行して進めた各検討において、いずれも有用な知見が得られ研究に確実な進展がみられた。特にこれまで合成例のなかった分岐型フラバンオリゴマー、parameritanninA2の合成研究においては、世界初の全合成に成功した。またその研究の途上、スルフェートアニオンを用いたオキシラン環の開環反応においては、高い立体選択性が発現することを見出すなど、当初予想しなかったような成果も得られた。また、その他の合成研究においても、確実に進展が見られ、複雑なフラボノイドオリゴマーの新たな有機合成法を開発するための道筋が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題にて目標とする新規ケミカルスペースの開拓研究については、順調に成果が得られている一方で、合成した化合物の生理活性評価や機能評価については、コロナ禍の影響も重なって、他研究期間との連携や実地での試験は十分とは言えないため、今後はこれらについても検討を進めてゆく。 また、より複雑な構造をもつフラバンオリゴマーの合成を可能とする新規連結方法の開発や、合成の効率向上に繋がりうるフロー合成や自動合成技術も積極的に取り入れ、検討を進めてゆく。
|