研究課題/領域番号 |
21H04714
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293913)
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研究分担者 |
森 哲 京都大学, 理学研究科, 教授 (80271005)
中崎 敦夫 岩手大学, 理工学部, 教授 (00366428)
木村 泰久 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10415143)
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20186993)
堀中 真野 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80512037)
栗山 長門 静岡社会健康医学大学院大学, 社会健康医学研究科, 教授 (60405264)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | ブファジエノライド / ヘビの防御物質 / 毒の蓄積 |
研究実績の概要 |
ヤマカガシ属ヘビが主食となる生物種を変える際、防御用の毒源もヒキガエルから陸棲ホタルへ移行し、餌由来のブファジエノライド(BDs)を防御物質として維持・再利用する現象を申請者らは明らかにした。この発見を基盤にして、ヤマカガシの①食性変化、②毒源の移行・蓄積に関わる因子、③BDsの生態的機能を化学、生化学、行動の視点から比較・解析し、食性進化のメカニズムを解明することが本研究の目的である。
・ヤマカガシに対する BDsの給餌実験により、ヤマカガシ体内における BDsの変換反応を確認できる系を確立した。これにより、日本のヒキガエルの普遍的成分、bufalin がヤマカガシの体内で化学変換され、頸腺に蓄積されることを実験的に証明した。 ・ヤマカガシから、ゲノム DNA を外注可能なクオリティで抽出する方法を確立し、ゲノムのアセンブリおよび繰り返し配列の推定まで終え、ゲノムサイズが4.03 Gbという結果を得た。 ・BDsの標品や、ヤマカガシ頸腺液のメタノール粗抽出物の毒性測定を、ヒトがん細胞に対する抗腫瘍活性試験により、簡便に行うことを可能にした。本手法により、BDsにおける官能基の位置や向きの一つの違いが毒性に影響を及ぼすことを見出した。 ・ステロイド環のAB 環がtrans 縮環で、11位にアルファーの位置で水酸基が結合した化合物の合成を検討している。当初の計画では不明であった分子の反応性[(1) 周辺の立体障害のため、鍵中間体1 の11 位-12 位アルケンの反応性が低い点、(2) 17 位の2-ピロンは還元条件に弱い点]が明らかとなった。そこで、当初の計画を変更したルートの採用、および新たな合成法の開発が必要となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響で、当初予定した中国への出張が不可能になった。しかしながら、日本においてヤマカガシとヒキガエルを用い、種々の研究が進行している。
・ヤマカガシのゲノム解析を継続中である。4.03Gbのドラフトゲノム配列を決定し、39,633個の完全長遺伝子配列を同定した。得られた配列より、タンパク質ABCトランスポーターの変異解析が進んでいる。 ・餌であるヒキガエル由来のBDsを利用し、ヤマカガシは特異的なBDsに変換している。ヒト肺がん細胞(A549)、ヒト大腸がん細胞(HT-29)、ヒト乳がん細胞(MCF-7)を用いて、BDsにおける官能基の位置や向きの違いががん細胞に対する毒性に影響を及ぼすことが分かりつつある。 ・ヤマカガシの各種臓器におけるBDsの分布に関する情報が整理され、ヒキガエル由来のBDsの動態がヤマカガシの体内全体で見えつつある。 ・液体クロマトグラフィーを用い、 頸腺液中の BD 類の総量 (絶対 BD量)をハイスループットに定量する方法を考案した。
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今後の研究の推進方策 |
・ヤマカガシに対する BDsの給餌実験により、BD 類変換能力の地域差に関して更なる情報を得る。また、BDs給餌後のヤマカガシの各種臓器を化学分析し、変換場所の特定および頸腺以外のGDs類の蓄積場所を探る。 ・ゲノムのアセンブリおよび繰り返し配列の推定まで終えたヤマカガシ DNA データのクオリティチェックを進める。また、頸腺や種々の組織における RNA シーケンスを行い、そのデータとゲノムデータを照合することで、今後の遺伝子領域の推定、ヤマカガシにおけるBDsの変換遺伝子、酵素の解明を目指す。 ・2022年度に考案した頸腺液中の BDsの総量 (絶対 BD量)をハイスループットに定量する方法を用いて、ヤマカガシのもつ BDsの総量や濃度の個体差や、それらに影響を与える内在的要因を調査し、ヤマカガシの BDs蓄積に関する基礎情報を得る。
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