研究課題/領域番号 |
21H04720
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
長田 裕之 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, ユニットリーダー (80160836)
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研究分担者 |
室井 誠 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (30261168)
木野 邦器 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60318764)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー / 人工知能 / 抗真菌剤 |
研究実績の概要 |
本研究では、人工知能(AI)を活用した標的志向型スクリーニングと表現型スクリーニング、ヒット化合物の標的同定とin vivoでの有効性評価、により、構造や作用が新しい抗真菌剤を見出すことを目的としている。 抗真菌活性を有する化合物をAIで予測する構造活性相関モデルを構築するため、本年度は、抗生物質データベースAntibaseに抄録されている抗真菌物質を構造的なクラスターにわけて、その代表的な化合物で構成した「抗真菌活性」標的別ライブラリーを構築した。またそれらのWetでの実験結果をもとに活性予測モデルの構築を検討した。表現型スクリーニングでは、植物病原菌 Pyricularia oryzaeや麹菌Aspergillus oryzaeの形態変化を分類するAIモデル「第二世代fungal MorphoBase (2G fMorphoBase)」の改良を重ね、麹菌の形態変化を85%以上の精度で見極められるようになった。またこのシステムを使って化合物ライブラリーや微生物培養エキスのスクリーニングを実施し、一放線菌が構造や作用で新規性の高い物質を生産することを見出した。さらに化合物ライブラリーから見出した化合物の作用を形態変化やハプロイド変異体ライブラリーを使って予測した。標的候補タンパク質については、直接的な相互作用やタンパク質機能に対する影響を検討して標的としての妥当性を検証している。本化合物については、昨年度に確立したカイコの感染実験系でin vivo での抗真菌活性を評価したところ、治療効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AIを活用した標的志向型スクリーニングでは、独自の記述子発生プログラムを使い、トレーニングセットになる「抗真菌活性」標的別ライブラリーを構築した。選び出した化合物のWetでの活性評価は進んでおり、その結果をフィードバックすることで抗真菌活性を有する化合物をAIで予測する構造活性相関モデル構築に向けた大きな前進が見込まれる。表現型スクリーニングでは、数百万枚の画像データを使ったAI形態判別モデルが完成し、精度よく判別できるようになった。またこのデータベースを使った天然物スクリーニングで新規性の高い化合物が見つかってきており、今後の発展が期待される。さらに化合物ライブラリーから見出した化合物の作用機序解析を実施したところ、これまでにないfirst-in-classの作用を有することが示唆されている。カイコを使ったin vivo感染実験系でも感染を抑制する傾向があり、研究は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
AIを用いた標的志向型スクリーニングでは、Dry(予測モデルでの化合物の選び出し)とWet(選出化合物の活性評価)での検証を繰り返し、化合物と生物活性間の関連性を予測する構造活性相関モデルの構築を目指す。AIを用いた表現型スクリーニングでは、新たに病原性真菌Candida albicansの形態変化評価モデル 2G fMorphoBaseも構築して、天然資源からのスクリーニングを加速する。ヒットした微生物培養エキスについては活性物質の同定を進める。またスクリーニングで見出した化合物については、耐性変異株の樹立やハプロイド変異株ライブラリーMerck DBC strain libraryに対する薬剤感受性プロファイリングによって標的分子の推定を行う。候補タンパク質については、化合物固定化ビーズやCETSA、マイクロスケール熱泳動などを用いて薬剤との直接的な相互作用を検討するとともに、タンパク質機能に与える影響も検討して標的としての妥当性を検証する。さらにカイコを用いた感染実験系でヒット化合物のin vivoでの抗真菌活性を評価する。
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