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2021 年度 実績報告書

作物の生理障害の機構解明におけるブレークスルーテクノロジーの開発と検証

研究課題

研究課題/領域番号 21H04721
研究機関東北大学

研究代表者

金山 喜則  東北大学, 農学研究科, 教授 (10233868)

研究分担者 高橋 英樹  東北大学, 農学研究科, 教授 (20197164)
渡部 敏裕  北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
須川 成利  東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (70321974)
栗原 大輔  名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (90609439)
黒田 理人  東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (40581294)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2026-03-31
キーワード野菜 / 生理障害 / トマト
研究実績の概要

環境ストレスによって引き起こされる生理障害は、病虫害と並んで世界・日本で農業被害の双璧である。しかし原因が明確な病害虫と比べてその研究は遅れており、発生機構の全容解明は困難な状況にある。そこで本研究では、世界で最も生産されている野菜であるトマトに甚大な被害を及ぼす尻腐れ果をモデルケースとし、ブレークスルーテクノロジーとして原因イオンのレポータータンパク質によるイメージング、高感度センサ等による障害部位の早期検出や内部構造の可視化を実施して原因を特定することとした。さらに、イオノミクスを含むオミクスと遺伝子発現制御によるエビデンスの獲得により、尻腐れ果の発生機構の解明を進めることとした。そして以上により、生理障害を克服する技術開発と解析プラットフォームを提案するための基盤を確立することを目的とした。困難とされている尻腐れ誘導実験系については、実験用トマトであるマイクロトムを用い、カルシウム濃度の調節を基本とした実験系の検討をおこなった結果、精度・安定性をさらに高める必要はあるものの、尻腐れ果の発生を誘導する基本的な実験系はほぼ確立した。また、カルシウムセンサタンパク質であるGCaMPの利用については、トマトでの利用について多面的な検討をおこなった。その結果、より精度を上げる必要はあるものの基本的な利用条件を明らかにすることができた。さらに、高感度センサでは仕様の検討をおこなうとともに試作品を作成し、イオノーム解析を含むオミクス解析では果実発育の初期段階での成長速度とカルシウム濃度との関係が障害発生に影響することを示し、また放射光を利用した解析においてはX線位相コントラストCT法により維管束を可視化できることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究実施計画のうち、生理障害、特に尻腐れ果の発生の早期検出等のための高感度センサの利用においては、解析の条件設定をおこない、実験結果の分析を実施し、結果のとりまとめを2021年度末までにおこなう予定であった。しかし、センサを利用した解析の条件設定をおこなったところ、障害の検出をおこなうためにはセンサのコンパクト化の必要性が生じた。研究遂行上、コンパクトなセンサを利用し、解析条件の設定をおこなうことが必要であることから経費を翌年度に繰り越して、センサの仕様を検討し、試作品センサを作成した。現在、この繰り越し項目および他の項目について特段の進捗上の問題がないため、上記の進捗状況とした。

今後の研究の推進方策

今後は引き続き、主要野菜であるトマトにおける尻腐れ果を対象とし、ブレークスルーテクノロジーとして、原因イオンのレポータータンパク質によるイメージング、高感度センサ等による障害部位の早期検出や内部構造の可視化、イオンや遺伝子の網羅的解析と遺伝子発現制御によるエビデンスの獲得により、尻腐れ果の発生機構を解明するとともに、生理障害解析の解析プラットフォームを提案する方向で研究を推進する。そのため、実験用トマト品種マイクロトムを用いた尻腐れ果発生誘導系の確立においては、精度と再現性を上げるための処理方法を検討することとし、特に低カルシウム濃度処理に加えて他の環境ストレス処理を組み合わせていくなどの方策を考えている。また、カルシウムセンサタンパク質であるGCaMPの利用については、果実での利用法の確立を進め、試料切断等の影響を排除して、各種刺激による蛍光シグナルの上昇を明確に検出できる条件を明らかにする予定である。さらに、高感度センサの利用においては、開発した試作品を用いて撮影条件の設定をおこない、またオミクス解析においては引き続きイオノームを中心として尻腐れ果の発生と各元素との関係の検討を続ける方向である。以上の計画を実施することによって、尻腐れ果発生機構の解明をすすめるとともに、各々の解析方法の有用性を検証していく予定である。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] High-Resolution X-ray Phase-Contrast Imaging and Sensory and Rheometer Tests in Cooked Edamame2022

    • 著者名/発表者名
      Hidaka Masafumi、Miyashita Shuhei、Yagi Naoto、Hoshino Masato、Kogasaka Yukiya、Fujii Tomoyuki、Kanayama Yoshinori
    • 雑誌名

      Foods

      巻: 11 ページ: 730~730

    • DOI

      10.3390/foods11050730

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ionomic differences between tomato introgression line IL8?3 and its parent cultivar M82 with different trends to the incidence of blossom-end rot2021

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Toshihiro、Tomizaki Ryota、Watanabe Ryotaro、Maruyama Hayato、Shinano Takuro、Urayama Masaru、Kanayama Yoshinori
    • 雑誌名

      Scientia Horticulturae

      巻: 287 ページ: 110266~110266

    • DOI

      10.1016/j.scienta.2021.110266

    • 査読あり
  • [学会発表] センサータンパク質を用いたトマト果実におけるカルシウムシグナリングに関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      原田龍之介・栗原大輔・山田恵太郎・西山学・加藤一幾・金山喜則
    • 学会等名
      園芸学会
  • [学会発表] トマト‘Micro-Tom’の尻腐れ果におけるアスコルビン酸生合成に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      山田恵太郎・西山学・金山喜則・加藤一幾
    • 学会等名
      園芸学会
  • [学会発表] パプリカの栽培および貯蔵における温度が果実品質に及ぼす影響2022

    • 著者名/発表者名
      青代香菜子・西山学・金山喜則・加藤一幾
    • 学会等名
      園芸学会
  • [学会発表] 高性能イメージセンサを用いたトマトの生理障害と品質の非破壊測定2022

    • 著者名/発表者名
      青代香菜子・黒田理人・堀千秋・中山翔太・堀江駿斗・須川成利・金山喜則
    • 学会等名
      園芸学会
  • [学会発表] 東北大学に建設される次世代放射光施設で何ができるか2021

    • 著者名/発表者名
      金山喜則
    • 学会等名
      園芸学会東北支部
    • 招待講演
  • [学会発表] トマトモデル品種‘Micro-Tom’における尻腐れ果発生機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      山田恵太朗・堀 千秋・西山 学・金山喜則・加藤一幾
    • 学会等名
      園芸学会東北支部
  • [学会発表] Examination of an evaluation method for the quality of vegetable soybean (edamame) using rheometer and X-ray phase-contrast imaging2021

    • 著者名/発表者名
      Hidaka, Masafumi; Miyashita, Shuhei; Yagi, Naoto; Kogasaka, Yukiya; Fujii, Tomoyuki; Kanayama, Yoshinori
    • 学会等名
      The 2nd International Pan American Light Sources for Agriculture (PALSA 2021)
    • 国際学会
  • [学会発表] Feasibility study on synchrotron radiation utilization in the field of agricultural and food res earch at Tohoku University2021

    • 著者名/発表者名
      M. Hidaka, Y. Kanayama, K. Hara, T. Nakano S. Miyashita, S. Tazo, A. Hio, M. Harata
    • 学会等名
      The 2nd International Pan American Light Sources for Agriculture (PALSA 2021)
    • 国際学会
  • [学会発表] Effects of blue and red light on metabolic profile in tomato fruit2021

    • 著者名/発表者名
      Xiao, L., T. Shibuya, M. Nishiyama, K. Kato and Y. Kanayama
    • 学会等名
      The IX ISHS Symposium on Light in Horticulture
    • 国際学会
  • [学会発表] トマト尻腐れ発症率の品種間差と果実への無機元素蓄積の関係2021

    • 著者名/発表者名
      長谷川公紀, 渡邊涼太郎, 丸山隼人, 金山喜則, 信濃卓郎, 渡部敏裕
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会
  • [学会発表] オミクス解析によるトマト果実の代謝に及ぼす光質の影響の究明2021

    • 著者名/発表者名
      肖凌冉・渋谷知暉・西山学・加藤一幾・金山喜則
    • 学会等名
      園芸学会
  • [学会発表] 放射光を用いたエダマメの品質評価法の検討2021

    • 著者名/発表者名
      金山喜則・日高將文・ 宮下脩平・八木直人・小 賀坂行也・藤井智幸
    • 学会等名
      園芸学会
  • [学会発表] Integrated analyses of the metabolome and transcriptome to reveal the effect of light quality on metabolism in tomato fruit2021

    • 著者名/発表者名
      Lingran Xiao, Tomoki Shibuya, Manabu Nishiyama, Kazuhisa Kato, Yoshinori Kanayama
    • 学会等名
      The 17th Japan Solanaceae Consortium
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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