研究課題/領域番号 |
21H04731
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
都木 靖彰 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (10212002)
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研究分担者 |
浦 和寛 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (90360940)
東藤 正浩 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10314402)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | コラーゲン線維コーティング / 再生医療チタン材料 / 表面加工 / 骨誘導 / 水産廃棄物利用 |
研究実績の概要 |
(a) 骨ミメティック構造の創出: 我々のグループが開発したチョウザメ浮袋コラーゲン線維を細胞培養ウェル底面にコーティングし,その線維をポリアスパラギン酸を含む模擬体液(SBF)中でインキュベーションすることで,生体骨に沈着する結晶体であるヒドロキシアパタイト結晶を含む石灰化線維コーティングに成功した.本コーティングでは,比較的直径のばらつきが小さい線維が一方向に配列し,その線維がパッチ状に石灰化する.
(b) チタン材料表面への骨ミメティックコート技術の開発: チタン表面にコートするコラーゲンコートの材料強度の測定に挑戦した.3点曲げ試験によってコラーゲン原線維コートの力学的評価に成功したが,今後の改善が必要である.
(c) 骨ミメティック構造に対する幹細胞反応性の解明: ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC,ロンザ株式会社)を培養し,その基本性状と継代による細胞増殖・骨芽細胞分化能の変化を検定した.本細胞はドナーから採取後,継代を2回おこなった状態(以後継代数はPで表す.たとえば継代2回の細胞はP2と表す)で研究室に届く.しかし,そのロットにより細胞増殖能が大きくばらつくことため,1ロットで1結果を出す必要があり,ロット間をまたぐ結果の比較はできないことが示された.また,P5に比べ,P6,P7,一度凍結保存をしたP5(凍結P5)は増殖の様態や骨芽細胞分化の様態が異なった.すなわち,P6はP5と比較して増殖活性の低下と骨芽細胞分化の遅れが生じたものの,増殖活性試験のグラフの形はP5と同様であったこと,骨芽細胞分化の活性自体は比較的保たれていたことから,細胞数を増やしてから実験をおこないたい場合(たとえば,比較する群数が多い場合など)には,P6を用いた実験が可能であった.一方でP7と凍結P5においては増殖活性の変化と骨芽細胞分化活性の低下が著しいことから,実験に用いることは難しい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したとおり,概ね当初の研究計画通りに研究を進められた.コロナ禍の影響で,北大水産学部(函館キャンパス)から工学部(札幌キャンパス)への出張を伴う試験(結晶のX線回折分析(XRD))が21年度中にはできなかったが,予算を繰り越したことで22年に結果を得ることができた.また,結晶析出の有無や析出量の相対的変化などを見積もるために用いるEDX解析法も札幌キャンパスでの分析を予定していたが,北海道立工業技術センターの走査型電子顕微鏡を共同利用させて頂くことで,函館で解析ができるように環境を整えた.これにより,概ね当初計画通りに研究を遂行できた.一方で,21年度に創出できた骨ミメティック構造(石灰化コラーゲン線維層)は,コート面全体が一様には石灰化しておらず,細胞サイズより小さいパッチ状の石灰化面がランダムに分布するものである.22年度には,一様な石灰化コラーゲン線維層ができるよう,技術を改善する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,概ね研究計画通りに研究を遂行する.計画では,チタン材料表面にヒドロキシアパタイト結晶を析出させ,その上にコラーゲン線維をコーティングし,さらに線維を石灰化させることでヒドロキシアパタイト結晶を融合させてコラーゲン層とチタン表面とを強固に接着する計画である.2022年度は,特にチタン表面へのヒドロキシアパタイト結晶析出にも取り組む.また,理想的な骨ミメティック構造(一様な石灰化コラーゲン線維層)の創出に挑む.幹細胞を用いた試験では,一様な石灰化コラーゲン線維層の創出に時間が必要なので,幹細胞の接着過程や細胞形態の発達に関する試験は後ろ倒しとして,23年度に開始する予定だった幹細胞の遺伝子発現プロファイルの解析技術開発を前倒しでおこなう.
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