研究課題/領域番号 |
21H04733
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 継之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90533993)
|
研究分担者 |
小林 加代子 京都大学, 農学研究科, 助教 (00806416)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
キーワード | セルロースナノファイバー / 結晶性 / 欠陥 |
研究実績の概要 |
木材のパルプ繊維をミクロフィブリル単位または微細なミクロフィブリル束にまで解きほぐすとセルロースナノファイバー(CNF)となる。CNF1本の幅は2~3 nmと非常に細いため断面の直接観察は困難であり、断面形状の決定には至っていない。しかしながら、断面形状は繊維材料の重要な構造特性であり、繊維の力学的および光学的な性質を支配する。さらに、断面の形が異なれば、CNF表面における分子鎖の数や向きも異なる。すなわち、CNF1本の断面形状は、CNF材料 の機能設計や他素材との複合化において必須の知見といえる。そこで本研究では原子間力顕微鏡(AFM)像の画像解析によってCNFの形状を統計的に評価し、その断面形状を推定することを目的とした。
AFM観察で得られたデータは画像解析を用いてCNF部分とその中心線を抽出し、広い観測範囲からCNFの高さ情報を取得した。一方、これまでに提案されている有力な断面モデルを仮定し、測定され得る高さ範囲についてのシミュレーションを行った。これらを比較した結果、観測された高さ分布はいずれの断面モデルでシミュレーションされる高さ範囲よりも広いことがわかった。しかしながらCNFが重なったような部分を除くと、観測データの上限は18本鎖の断面モデルのシミュレーション結果とよく一致した。一方、断面モデルよりも低く観測される箇所が30~40%存在することがわかった。これはCNF表面に凹みが存在する、すなわち分子鎖が欠落したような欠陥が存在することを示唆していた。以上より、AFM観察による統計的なCNFの高さ解析の結果は18本鎖の断面モデルを支持しており、そこには凹み状の欠陥が存在することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記載のとおり、2022年度は断面形状の解析に注力し、最適な断面モデルを提案するとともに、欠陥部の定量化まで進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
計画書に記載のとおり、2023~2024年度はセルロースナノファイバーの表面構造と欠陥構造の解析に取り組む。特に2023年度は、表面構造の原子分解能解析に注力する。
|