研究課題/領域番号 |
21H04734
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 健二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30208954)
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研究分担者 |
渡辺 敦史 九州大学, 農学研究院, 教授 (10360471)
寺田 康彦 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20400640)
清水 文一 東洋大学, 生命科学部, 教授 (50324695)
楠本 大 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 講師 (80540608)
種子田 春彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90403112)
梅林 利弘 秋田県立大学, 生物資源科学部, 特任助教 (20585997)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | マツノザイセンチュウ / 通水阻害 / エンボリズム / MRI / 非破壊観察 / X線CT |
研究実績の概要 |
クロマツ苗に対して2022年および2023年の夏季に強病原性マツノザイセンチュウの接種試験を行った。苗木については、蒸散による負圧が生じない暗黒条件に置いた苗と、通常の自然光条件に置いた苗の通水阻害の進行をMRIにより非破壊観察した。その結果、負圧がある状態(自然光条件)では通水阻害が徐々に進行したのに対して、負圧がない暗黒条件下では通水阻害がまったく発生せず、接種後一定期間を経てから自然光条件に移すとただちに通水阻害が発生した。このことから、材線虫病において通水阻害(エンボリズム)の原因物質は、暗黒条件下で仮道管内に分泌されており、負圧の存在したで通水阻害の発生に至るということが示唆された。また、マイクロX線CTによる接種苗の木部の観察を行った結果、通水阻害部の仮道管内に何らかの物質が存在していることが観察された。これらの観察はすべて数年生の苗木を用いた結果であるが、野外の成木でも同様の現象が起きているかを確認するために、成木での接種試験も行う必要がある。そこで、2022年の春から翌年春まで、筑波大学構内に植栽されたアカマツ成木にMRIを設置し、木部水分通導の季節変化を非破壊で観察した。MRIにより樹液流速分布を可視化することに成功した。MRIによる木部横断面における樹液流速の可視化手法として、従来おこなわれてきたQSI(q-space imaging)に加えて、より簡便で木部組織構造や温度条件等の変化による影響を受けにくい手法として、新たにPSI(phase shift imaging:位相シフト法)による流束密度分布の可視化手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRIの不調により一部のデータ予算を繰越して接種試験を再度行う必要があったため、当初の計画に比べると進展が遅れているが、必要なデータは得られており、ほぼ順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に接種したアカマツ成木の組織サンプルや2024年に接種するクロマツ苗などを用いて、通水阻害を引き起こす原因物質の化学組成や分布と線虫の活動との関係を明らかにすることを目指す。また、アカマツ成木の枯死過程における樹液流速分布の変化を分析し、木部通水阻害および形成層の壊死が樹体全体の枯死を引き起こすメカニズムを明らかにする。
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