研究課題/領域番号 |
21H04740
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (90526526)
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研究分担者 |
上村 直史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50646528)
堤 祐司 九州大学, 農学研究院, 教授 (30236921)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | バイオリファイナリー / 白色腐朽菌 / 複合微生物 / 微生物間相互作用 / リグニン / 木材腐朽 |
研究実績の概要 |
本提案研究では、複合微生物による木材腐朽の完全理解と、その応用による新規バイオリファイナリー技術の創生を目指して以下の3つの問いを明らかにすることを目的とする。 1.腐朽材中で白色腐朽菌と細菌はどのように相互作用しているのか?昨年度合成したmGoldとmNeonGreenの蛍光タンパク質遺伝子を用い、R6K ori (λ pir補完性ori)のベクターに自殺用sacB遺伝子を挿入して組換え用ベクターを作製し、形質転換を行った。しかしながら擬陽性のSacB耐性菌しか得られず、恒常的な蛍光化には至らなかった。i-Sce-Iメガ制限酵素を利用した蛍光化細菌の作製方法に切り替えて進める。 2.細菌は白色腐朽菌と協調的にリグニンを資化するか?昨年度分離したカワラタケとその腐朽材から分離されたバニリン酸資化性細菌株Burkholderia属、Pseudomonas属、Acinetobacter属細菌を脱脂コナラ木粉上で共培養を行い木粉の重量減少率およびリグニンの分解率を調べた。その結果、カワラタケ単独での分解と比較し、それぞれの細菌株と共培養した際に木粉の重量減少率およびリグニンの減少率が優位に増加することが明らかとなった。本実験の再現性を得るとともに、腐朽後の木粉を有機溶媒で抽出し、リグニン断片を調べる必要がある。 3.木質バイオマス変換を微生物共培養で達成可能か?アルカリ処理したタケ紛を用いて、多機能性白色腐朽菌Phlebia sp. MG-60とClostridium属細菌との共培養によるブタノール発酵を行った。その結果、1.0%NaOH前処理と共培養を組み合わせることで、多糖類から発酵生成物への変換率が最も高かった。共培養による相乗効果で、水酸化ナトリウム処理したリグノセルロース中のセルロースとヘミセルロースを代謝してブタノール生産することが可能であることを初めて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定している細菌の恒常的蛍光化については当初計画と比べて進捗がやや遅れている。しかしながら、カワラタケと細菌との共培養で促進的な結果が得られたこと、アルカリ処理したタケ材から直接ブタノール発酵に成功したことから全体としておおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
相互作用の可視化を目指して、白色腐朽菌Phlebia brevisporaの成長促進細菌であるEnterobacter属細菌の構成的なGFP蛍光化に取り組んでいる。2022年度にsacB遺伝子を利用して作成を試みたが擬陽性株しか得られず、作成方法の転換が必要である。本年度は、i-Sce-Iというメガ制限酵素を利用した蛍光化細菌の作製方法に切り替えて完成を目指す。 白色腐朽菌Trametes versicolorの腐朽材から仮想低分子リグニン断片であるバニリン酸資化性細菌と木粉上で白色腐朽菌T. versicolorと共培養を行い、細菌の存在が木粉の重量減少およびリグニン分解率に正の影響を与えるというデータが得られた。そこで本年度は共培養を用いた木粉の分解試験を再び行い、再現性を得るとともに、木粉の腐朽により生じるリグニン分解断片を溶媒抽出し、GCMS分析に供することでその検出を試みる。細菌と白色腐朽菌が協調的にリグニンを分解しているのであれば、白色腐朽菌単独の処理で生じるリグニン断片は、それを資化する細菌の存在によって減少するはずである。また、仮説通りに細菌が白色腐朽菌により生じたリグニン断片を資化できるのであれば、細菌の生菌数に差が生じると考えられるため、生菌数の調査も行う。 申請者が構築済みのIntegrated Fungal Fermentation process:IFFPの脱リグニンおよび糖化・発酵の各プロセスに細菌を共存させることを目的として、アルカリで前処理したタケ紛に対してPhlebia sp.MG-60株とClostridium属細菌を共培養し、ブタノールが生成可能であることを明らかにした。そこで、本年度は実際にMG-60株による脱リグニン後の木粉にClostridium属細菌を共培養することで、微生物反応のみで木粉からブタノールを生成できるか検討する。
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