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2021 年度 実績報告書

先端画像計測とモデリング:n次元情報から読み解く細胞組織の健全性と品質評価

研究課題

研究課題/領域番号 21H04748
研究機関九州大学

研究代表者

田中 史彦  九州大学, 農学研究院, 教授 (30284912)

研究分担者 田中 良奈  九州大学, 農学研究院, 助教 (80817263)
今泉 鉄平  岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (30806352)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2025-03-31
キーワード農業工学 / 画像解析 / モデリング / 品質評価 / AI / Digital Twin
研究実績の概要

本研究は、生体内の時空間的な4D動態を「見える化」することを目的とする。(1)青果物細胞組織のナノ・マイクロ構造の観察と解析「造り」では、X線CTを用いてカキ、イチゴ、ニンジン等について3次元画像データを取得した。解析ソフトAmiraを用いて、マルチスケールで構造を可視化するとともに、画像解析により構造に関する特徴量を抽出し、細胞分布の不均質性や異方性等を評価、熱物性値との関係性について調査した。
(2)マルチフィジックス・シミュレーションによる細胞組織諸物性値の推算「模し」では、(1)で得た不均質性を考慮した場を対象として、各種物理量の時空間分布を推算し、青果物内部での熱・ガス移動の経路、分布変化の特徴を明らかにした。特に、ガス拡散では空隙の影響が顕著となることを見出し、鮮度保持に効果的な部分コーティング法についても提案した。(3)バイオスペックル法による細胞アクティビティの計測と活性度マッピング「活き」では、青果物の健全性を評価する手法について考究した。カキ果実を対象に、日持ち性の良さを収穫後の早い段階で判定することができれば、これに基づいた出荷先の選定が可能となり、結果としてフードロスが抑えられる。ここでは、バイオスペックル特性値のうち、輝度値、藤居指数とIM値、振幅累積和の経時変化を計測した。このうち、藤居値では貯蔵期間での増加がみられた。これは果肉細胞の崩壊により細胞内液が広がったことで、内包される物質移動の自由度が上がったことによる。また、クロロフィルの減少やカロチノイドの蓄積も藤居指数とIM値の値に影響を与えることが示された。さらに、バイオスペックル2Hz-3Hzと12Hzから15Hzの振幅累積和データに急速軟化個体を識別する可能性があることを見出し、機械学習による判別モデルを構築することで、急速軟化個体を76.2%の精度で判別できることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、(1)青果物細胞組織のナノ・マイクロ構造の観察と解析「造り」、(2)マルチフィジックス・シミュレーションによる細胞組織諸物性値の推算「模し」、(3)バイオスペックル法による細胞アクティビティの計測と活性度マッピング「活き」の3中課題で構成されるが、いずれもダイナミックに変化する青果物の特性・品質を評価する新たな解析フレームワークの確立に資する成果をあげている。(1)では、研究計画通りにカキ、イチゴの3Dイメージを取得した以外にも、ニンジンやナシ、ナス、ウメなど多数のデータを取得し、今後、幅広い利活用が期待される。(2)については、青果物物性値データを3次元空間に分布させる手法を開発し、複雑な場を形成することに成功した。この結果、これまで可視化が不可能であったガスの複雑な内部移動を可視化するとともに、鮮度保持に効果的な部分コーティング法を提案するなど、社会実装につながる成果をあげている。(3)については、バイオスペックル画像観察と機械学習の融合により、カキ果実の急速軟化果を判別する手法を開発し、日持ち選果を可能とする技術を提案するなど、有用な成果をあげた。基礎研究に止まらず社会実装を視野に入れた成果を得たことから、研究の進捗状況はおおむね良好であると判断した。

今後の研究の推進方策

(1)青果物細胞組織のナノ・マイクロ構造の観察と解析「造り」では、引き続き、X線CTによる画像取得と解析を進めるとともに、青果物の貯蔵や生長段階における構造や形態の変容を分析する。微細構造の健全性を評価する手法として、画像観察に加え、インピーダンス法による電気的特性を計測することで、構造変化と電気的特性の関係を明らかにする。(2)マルチフィジックス・シミュレーションによる細胞組織諸物性値の推算「模し」では、細胞-空隙インターフェイスの処理や計算領域サイズが有効な物性値の推算に及ぼす影響を調査し、モデルの改良と厳密化について検討する。また、熱・ガス拡散実験や代謝分析など各種実験によるモデルの妥当性の検証を行う。(3)バイオスペックル法による細胞アクティビティの計測と活性度マッピング「活き」では、日持ち選果の確立によりフードロスの低減を目指し、画像処理と機械学習の組み合わせにより、品質劣化の速い個体の選別や病原菌に罹患した個体の選別手法を提案する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] バイオスペックル画像解析によるカキの貯蔵性評価法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      吉村明音、大庭千佳、塚﨑守啓、田中良奈、田中史彦
    • 雑誌名

      日本冷凍空調学会年次大会講演論文集

      ページ: A32、1~5

  • [雑誌論文] バイオスペックル法による青果物の鮮度評価の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      田中良奈、田中史彦
    • 雑誌名

      アグリバイオ

      巻: 5(14) ページ: 73~76

  • [学会発表] バイオスペックル画像解析によるカキの貯蔵性評価法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      吉村明音、田中良奈、田中史彦
    • 学会等名
      2021年度日本冷凍空調学会年次大会
  • [学会発表] 青果物内部の三次元構造を用いたガス移動シミュレーションと有効拡散係数の推算2021

    • 著者名/発表者名
      豊田光希、田中良奈、田中史彦
    • 学会等名
      農業食料工学会第79回年次大会
  • [学会発表] バイオスペックルを用いたモモの鮮度評価の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      和田妃陽、吉村明音、田中良奈、田中史彦
    • 学会等名
      第75回九州農業食料工学会例会
  • [学会発表] 青果物内部の2次元構造を用いたガス移動解析と有効拡散係数の推算2021

    • 著者名/発表者名
      阿部怜香、豊田光希、田中良奈、田中史彦
    • 学会等名
      第75回九州農業食料工学会例会
  • [学会発表] 陽イオン添加ブランチングが青果物のペクチン構造に及ぼす影響2021

    • 著者名/発表者名
      岸明良、田中良奈、田中史彦
    • 学会等名
      第75回九州農業食料工学会例会
  • [学会発表] Quick removal of persimmon astringency by medium high hydrostatic pressure treatment2021

    • 著者名/発表者名
      Mayu Sugiura、Tetsuya Suzuki、Takeshi Niikawa、Hayato Ogino、Teppei Imaizumi
    • 学会等名
      7th International Symposium on Persimmon
    • 国際学会
  • [学会発表] 青果物輸出促進のための物流・情報流システムの構築2021

    • 著者名/発表者名
      田中史彦
    • 学会等名
      日本食品工学会第22回(2021年度)年次大会 シンポジウムA「食品サプライチェーン効率化・高度化への先端技術の応用」
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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