研究課題/領域番号 |
21H04755
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
大鐘 潤 明治大学, 農学部, 専任教授 (50313078)
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研究分担者 |
乾 雅史 明治大学, 農学部, 専任准教授 (20643498)
長嶋 比呂志 明治大学, 農学部, 専任教授 (50318664)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | エピジェネティックなゆらぎ / DNAメチル化 / ハプロ不全優性遺伝病 |
研究実績の概要 |
ほ乳類遺伝子の約半数は転写を司るプロモーターにCpGアイランドを持ち、CpGアイランドと外側との境界はCpG shoreと呼ばれる。CpGのメチル化は遺伝子発現抑制の重要なエピジェネティック修飾で、CpG shoreではDNAメチル化状態が偶然に変動する「ゆらぎ」が見られることを発見した。二倍体の個体において片方の正常遺伝子のみでは発現量が不足するために発症するハプロ不全優性遺伝病では、同一家系内でも個人ごとに発現様態が異なるがその理由は配列のみでは説明できない。本研究では、一方のアリルの機能喪失変異による配列異常のみでは説明できないハプロ不全での病態のバラツキが、もう一方の正常アリルCpG shoreでのDNAメチル化の偶然「のゆらぎ」に起因することを検証する。実際には、ヒト遺伝性疾患がハプロ不全様式を示し、CpGアイランド型のプロモーターを持つFBN1およびRUNX2について、マウスおよびブタを用いて解析を行う。 今年度は、まずFBN1遺伝子の正常アリルCpG shore配列をマウス体内でブタ相同領域の配列に置換するために、ブタFBN1 CpG shoreおよびマウス細胞内での相同組み換え用のマウス配列のクローニングを行なった。これらのDNA断片を組み換え用ベクター内に導入し、ゲノム編集用コンストラクトの作製を行なった。また、エピゲノム編集によるDNAメチル化・脱メチル化誘導を効率よく行うため、すでに確立したFBN1 CpG shoreのDNA脱メチル化誘導系でのガイドRNAの最適化、およびマウスRUNX2についての新たなDNAメチル化誘導系の確立を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス体内でブタ型CpG shore配列を持つマウスを作製することで、アリルの区別を容易にした上でヒト転写制御により近いと考えられるブタCpG shoreでのエピジェネティック制御を解析することが可能となる。この目的のため、ブタCpG shore配列をクローニングし、その両端にゲノム編集での相同組み換え用のマウス配列を付加したコンストラクトの作製に成功した。これにより次年度にマウス受精卵でのゲノム編集用コンストラクトの導入で、マウス個体内の片方のアリルをブタCpG shoreに置換したものの作製が可能となった。また、これまでに検討したDNA脱メチル化のためのガイドRNAの組み合わせを変えることでエピゲノム編集によるDNA脱メチル化誘導系の最適化に成功した。また、CRISPROFFと培養細胞MC3T3E1を用いてRUNX2遺伝子の上流CpG shoreについて、エピゲノム編集による新たなDNAメチル化誘導系の確立に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はFBN1、RUNX2について、エピゲノム編集による新たなDNAメチル化および脱メチル化の誘導系の構築を完了する。さらにFBN1については、マウス個体内で片方のアリルをブタ型CpG shoreに置換したマウスの作製を行い、RUNX2については今後のエピゲノム編集の基盤となるRUNX2欠損マウス系統の樹立を行う。
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