研究課題/領域番号 |
21H04757
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
高松 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, グループ長 (60414728)
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研究分担者 |
奥村 香世 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70415561) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | ミツバチ / ハチミツ / 新規病原細菌 |
研究実績の概要 |
農作物の受粉を担うミツバチの健康を守ることは農業にとって極めて重要である。ミツバチの病原細菌としては、これまで腐蛆病菌しか知られていなかったが、我々は、国産ハチミツ中に幼虫の死亡率を上昇させる腐蛆病菌以外の菌が存在していることを発見した。これらは幼虫の重大な健康リスクとして養蜂業に経済的被害を与えてきた可能性がある。そこで本課題では、ミツバチの新規病原細菌候補株について、①幼虫に対する病原性の確認、②病原因子の探索、③検出法の開発および④野外における分布状況と蜂群の健康状態への影響調査を行うことで、今まで見過ごされてきたミツバチの健康リスクについてその全体像を明らかにすることを目指している。本年度は、 (1)ミツバチの新規病原細菌候補3菌種5株について、PacBio RSIIおよびIllumina Nova Seq 6000を用いてゲノム配列を決定した。 (2)ゲノム配列情報から標的遺伝子を選出し、ハチミツからこれらの菌を特異的に検出可能なリアルタイムPCR法を確立した。 (3)ミツバチ幼虫への毒性確認の比較対象として用いるアメリカ腐蛆病菌について感染試験を行い、幼虫が1-10個程度のアメリカ腐蛆病菌の芽胞を摂食すれば、50%の確率で死に至ることを示した。 (4)25,000個芽胞/ml餌の濃度で幼虫に芽胞を摂食させたところ、新規病原細菌候補3菌種のうち、Bacillus属菌1菌種は病原性を示さなかったが、Paenibacillus属菌2菌種はアメリカ腐蛆病菌に近いまたは匹敵する毒性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であった、新規病原細菌候補3菌種5株のゲノム配列の決定、これらの菌の特異的検出法の開発、ミツバチ幼虫に対するアメリカ腐蛆病菌の50%致死濃度の算出が予定通り完了したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)引き続きミツバチ幼虫を用いた新規病原細菌候補株の感染試験を行ない、50%の幼虫を死に至らしめる餌中の菌濃度(50%致死濃度:LC50)を算出する。 (2)決定した新規病原細菌候補株のゲノム情報を利用して、殺虫毒素等の昆虫に対する既知の病原因子の検索を行う。 (3)本年度開発した新規病原細菌を特異的に検出するリアルタイムPCR法について、ハチミツからの検出感度と定量性を確認する。 (4)遺伝子組換え細菌を作出するためのプラスミドベクターを新規病原細菌候補株に導入する方法を検討する。 (5)日本養蜂協会と全国の100名の養蜂家の協力のもと、野外における新規病原細菌候補3菌種の分布状況の調査に用いるハチミツを収集するとともに、各養蜂場における蜂群の健康状態について、年2回のアンケート調査を行う。
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