研究実績の概要 |
ゴルジ体の亜鉛恒常性維持機構の詳細を解析するため、ゴルジ体に存在する亜鉛輸送体ZnT4, 5/6, 7をそれぞれノックダウンした条件で、我々が新規に開発したサブオルガネラターゲット型亜鉛蛍光プローブを利用し、シス、メディアル、トランスゴルジ槽それぞれの亜鉛濃度を定量解析した。さらにそれぞれの亜鉛輸送体のゴルジ体内での局在を解析するため、超解像顕微鏡による観察を行った。以上の結果、ZnT4, 5/6, 7によるゴルジ体の亜鉛恒常性維持機構に関する重要な知見を得た。本結果をまとめ論文投稿を行い、現在は論文リバイス中である。さらに、ZnT4, 5/6, 7ノックダウン時の分泌タンパク質の生合成量の網羅的定量解析を行うことでゴルジ体内亜鉛依存的に生合成量が有意に変化する重要タンパク質を幾つか同定しており、現在そのメカニズム解明を進めている。
さらにシスゴルジ槽への亜鉛取り込み、および亜鉛依存シャペロンERp44の機能制御に関わるZnT7について、クライオ電子顕微鏡による構造解析を進め、inward facing form, outward facing form共に2.8Å分解能で構造決定した。これによりZnT7による亜鉛輸送メカニズムの理解が大きく進み、現在論文投稿に向け、構造情報に基づく機能データを取得中である。特に、ZnT7に特徴的な長いヒスチジンリッチループの機能的役割に着目し、そのループ領域欠失変異体の構造と活性を解析中である。以上のデータを統合し、2022年度前半に論文を投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ゴルジ体には亜鉛イオンを取り込むZnT4,5/6,7に加え、亜鉛イオンを排出するZIP9/11/13が存在する。ZnT4,5/6,7の機能解析については、2021年度におよそ完了したため、今後はZIP9/11/13の機能的役割を系統的かつ定量的に解析する必要がある。これにより、ゴルジ体における亜鉛恒常性維持機構の全容解明を目指す。
さらに、ZnT7の高分解能構造解析を達成したため、次は構造情報に基づく生化学機能解析ならびに阻害剤の開発を行う。ZnT7のクライオ電顕による構造解析に関する論文を一日も早く完成させ、2022年度中の論文受理を目指す。さらにZnT7の阻害剤開発を進め、これにより、ゴルジ体内の亜鉛濃度を低下させた条件でプロテオーム解析を行い、亜鉛恒常性維持とタンパク質恒常性維持の相関に関する重要な知見を集める予定である。
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