研究課題
研究代表者らの1細胞レベルで情報理論の解析により、細胞間の不均一性は逆に情報として利用され組織の正確な応答制御を可能としていることが明らかとなった(1細胞レベルの情報コード)。一方、組織内では同じ細胞であっても局在に応じて異なった応答を示す(ゾネーション)。例えば、肝臓では、門脈から中心静脈へ至る順に空間的に3つの機能的ゾーンに区分けされ、門脈周囲ではグルコース合成が、中心静脈周囲では解糖系が主要な細胞応答である。本研究では、これまで別々に解析されてきた1細胞レベルの情報コードと、ゾネーションを組み合わせることにより、ゾネーションによる細胞間不均一性を利用した情報処理の最適性を明らかにする。本年度は、トランスオミクスネットワークの入出力データセットとして、飢餓時の時系列データを取得した。このデータにより入力と出力のデータが取得できた。野生型マウスと肥満モデルマウス(ob/obマウス)について、自由摂食状態から飢餓処理を行い、0, 2, 4, 6, 8, 12, 16, 24時間後の肝臓をサンプリングした。サンプリングした肝臓から、メタボローム、リピドーム、プロテオーム、リン酸化プロテオーム、トランスクリプトームの計測を行った。その結果、飢餓時マウスのメタボロームは多彩な変動を示した。このような変化は他の階層でも計測されており、現在各階層のデータを説明する特徴量を抽出し、野生型と肥満モデルマウスではともにスケールフリーネットワークであった。しかし、時間制御については野生型では時間オーダーと時間パターンの相関が非常によく一致したが、肥満モデルマウスではそれが乱れていることが明らかとなった。今後、ゾネーションにおける発現レベルの違いだけでなく時間パターンの違いにも着目して解析を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
ゾネーションにおいては静的な発現パターンだけでなく動的な時間パターンも変動していることが明らかになる展開が得られたため。
時間パターンがどのように空間パターンに変換されるかという視点から細胞不均一性の情報処理機能のなぞを明らかにしていく。
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