研究課題/領域番号 |
21H04763
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田口 英樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40272710)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | タンパク質 / フォールディング / 翻訳 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
初年度は以下の研究を推進した。 【研究1】A) 翻訳速度に依存したフォールディングをするタンパク質の大規模同定:翻訳時フォールディングが翻訳伸長速度に影響を受けることが申請者らの研究を含めてこれまでに示唆されてきており、一部証明されている。しかし、プロテオームレベルでどうインパクトを及ぼすのか全く不明であった。そこで、翻訳伸長速度に影響を及ぼす翻訳因子の変異株、特定tRNAの欠損株などにおいて、どのようなタンパク質の発現やフォールディング(可溶性)が影響を受けうるのかプロテオームレベルで調べた。B) 再構築型無細胞翻訳系を用いた翻訳時フォールディング解析:翻訳速度に依存したフォールディングを分子レベルで詳細に調べるには再構成系が必須である。研究代表者がこれまで成果を挙げてきた大腸菌の翻訳再構成系(PUREシステム)を使ったフォールディング研究、シャペロン研究をベースとして、翻訳速度とフォールディングの関連が示唆されたタンパク質をPUREシステムで翻訳させて解析した。さらに、PUREシステムにシャペロンを加えることでフォールディングにどのような変化が及ぶかも調べた。 【研究2】 生細胞内でのフォールディング可視化と分子機構:近年、ヒトの生細胞のサイトゾル内での翻訳過程を実時間でトラッキングする手法が開発されている。本研究では、この手法を発展させて、生きた細胞内で翻訳に共役したフォールディングを直接可視化することを目標の一つとしている。具体的には、天然構造を認識し、変性状態には結合しない抗体断片(構造認識Fab)を用いて、細胞内でのフォールディングを可視化する。R3年度はカナダで開発された構造認識Fabをコードする遺伝子を入手し、その特徴を調べるところから研究をスタートした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に記載したように、翻訳速度に依存したフォールディングに関して従来できなかった研究が実現しようとしている。今後の展開に大きな期待が持てることから、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
【研究1】翻訳速度に依存したフォールディング:翻訳伸長速度によってフォールディングが影響を受けて、タンパク質の可溶性などが変化しうることが一部明らかになった。どのようなタンパク質が翻訳速度に影響を受けるのかについてプロテオームレベルでは全く明らかではない。(研究1-1)翻訳伸長速度に影響を及ぼす翻訳因子の変異株などを用いてプロテオームレベルでどのようなタンパク質のフォールディングが翻訳速度変化で影響を受けうるのか調べる。R3年度に予備的な解析を質量分析で行ったので、さらに詳しく解析を続ける。(研究1-2)翻訳伸長速度を人為的に変化させることで、フォールディングを制御する。同義置換で翻訳速度を変えることで細胞内のフォールディング状態に変化が出ることが知られているタンパク質を無細胞翻訳系で合成し、そのフォールディング特性を解析する。 【研究2】 生細胞内でのフォールディング可視化と分子機構:近年、ヒトの生細胞のサイトゾル内での翻訳過程を実時間でトラッキングする手法が開発されている。本研究では、この手法の開発者との国際共同研究により、生きた細胞内で翻訳に共役したフォールディングを直接可視化することを目標の一つとしている。具体的には、概念実証実験としてGFPやHaloタグタンパク質を用いて生細胞内でのフォールディングの可視化を実現する。さらに、タンパク質の天然構造を認識するが、変性状態には結合しない抗体断片(構造認識Fab)を用いて、細胞内でのフォールディングを可視化する。R3年度に構造認識Fabを入手し、予備的な生化学的な検討を行った。R4年度はこの構造認識Fabを用いて、生細胞内でのフォールディング研究に着手する。
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