研究課題
脂質二重層からなる細胞膜においてリン脂質は外層と内層で非対称的に分布している。特に、フォスファチジルセリン(PtdSer)はATP依存的に作用するフリッパーゼによりその全てが細胞膜内層に局在する。このリン脂質の非対称的な局在はアポトーシスや細胞融合、活性化された血小板などさまざまな生物現象で崩壊、暴露されたPtdSerがシグナル分子として作用する。このリン脂質の非対称性を崩壊させる分子としてリン脂質ATP非依存的に通過させるスクランブラーゼが考えられていた。私達は これまでに、2個のP4-ATPases(ATP11AとATP11C)を細胞膜に存在するフリッパーゼとして、TMEM16FおよびXKR8をCa2+あるいはアポトーシス時に活性化されるカスパーゼによって活性化されるスクランブラーゼとして同定した。そして、XKR8はBasiginと呼ばれるType I 膜タンパク質と会合していることを突き止めた後、XKR8-Basigin複合体の構造をCryo-EM法を用いて解析した。その結果、XKR8の分子内部に親水性のアミノ酸が階段状に配置されていることを見出し、リン脂質がこれらアミノ酸をstepping stoneとして通過する可能性を指摘した。本年度、XKR8-Basigin複合体を ナノデイスク(脂質二重層をスキャフォールドタンパク質MSPで固定した構造物)に包埋後、CryoEM法によりその構造を解析した。その結果、XKR8のC-末端部位が分子の底辺にプラグのように結合、分子がスクランブラーゼとして作用することを抑制していることが判明した。実際、このプラグ部位に点変異を導入するとその変異体は構成的にスクランブラーゼ活性を示した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件) 備考 (2件)
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