研究課題/領域番号 |
21H04771
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小松 雅明 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (90356254)
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研究分担者 |
三浦 芳樹 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90279240)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | オートファジー / 選択的オートファジー / ユビキチン / p62 / 液―液相分離 / KEAP1 |
研究実績の概要 |
1. 選択的オートファジー基質の網羅的探索-1 オートファジーの対象となるミスフォールドや変性したタンパク質は、ユビキチン化されp62と結合、液―液相分離(LLPS)によって液滴となる。この液滴は、さらに分解性のタンパク質ゲルへと相転移し、オートファジーにより分解される。しかし、p62液滴・ゲルに含まれるユビキチン化タンパク質はほとんど不明である。今回、p62液滴・ゲルの精製方法を確立、トリプシン消化した精製p62液滴・ゲルをユビキチン化リジンのみを免疫沈降するPTMScan法により精製、質量分析によりp62液滴・ゲルに含まれるユビキチン化タンパク質を同定した。 2. 選択的オートファジー基質の網羅的探索-2 国外共同研究者であるJin-A Lee博士(韓南大学)は、オートファゴソームに局在し選択的オートファジーに寄与するAtg8ファミリータンパク質に結合する人工プローブHyD-LIR(TP)を開発した(EMBO J, 2017)。このプローブを過剰発現させることで、オートファゴソーム形成には影響を与えず、選択的マクロオートファジーを各臓器で阻害できるマウスを開発した(Nat Comm 2021)。このマウスを利用し、肝臓特異的選択的オートファジー不全マウス肝臓、及びコントロールマウス肝臓のtandem mass tagによる相対定量プロテオミクス分析を行い、選択的オートファジー不全マウス肝臓組織に蓄積しているタンパク質群を同定した。 3. p62液滴・ゲルの生理的意義 p62の液―液相分離に必須な7番目のリジン残基をアラニンに置換した液滴形成不全p62ノックインマウス(p62K7A/K7Aマウス)を作製した。また、p62とKeap1との結合を強める、あるいは弱める、351番目のセリン残基をグルタミン酸に置換、あるいはアラニンに置換したp62ノックインマウス(p62S351E/S351E, p62 S351A/1S351Aマウス)を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
革新的なp62液滴・ゲル精製方法と世界初の選択的オートファジー特異的阻害マウスにユビキチン化タンパク質の同定方法を組み合わせることで新規オートファジー基質群の同定を行った。今後、新規基質の詳細な解析により新しい選択的オートファジーの生理機能の知見が得られることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
(1)新規選択的オートファジー基質群の解析-1 同定したp62液滴・ゲルに含まれるユビキチン化タンパク質群の解析を進める。具体的には、ユビキチン化されるのか否か、p62液滴・ゲルに局在するのか否か、オートファジーにより分解されるのか否かを検証する。 (2)新規選択的オートファジー基質群の解析-2 同定した選択的オートファジー不全マウスに蓄積するタンパク質群の解析を進める。具体的には、選択的オートファジー不全マウスでは転写因子Nrf2が活性化されることが判明していることから、肝臓特異的Keap1欠損マウス肝臓(恒常的Nrf2活性化マウス)に蓄積するタンパク質群との差分解析を行う。絞り込んだ基質候補タンパク質に関しては、オートファジーにより分解されるのか否かを検証する。 (3)p62液滴・ゲルの生理的意義 作製したp62K7A/K7A、p62S351E/S351E、p62 S351A/S351Aマウスの表現型解析を行う。
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