オートファジーの対象となるミスフォールドや変性したタンパク質は、ユビキチン化されp62と結合、液―液相分離(LLPS)によって液滴となる。この液滴は、さらに分解性のタンパク質ゲルへと相転移し、オートファジーにより分解される。通常、LLPSにより生じた液滴は生体内で多彩な機能を発揮することが知られている。細胞質液滴であるp62 bodyに関してはそのオートファジー分解の理解が進んでいる一方、p62 bodyの細胞機能に関しては不明な点が多い。NRF2は抗酸化ストレスのマスター転写因子であり、通常KEAP1の酸化還元状態によって制御される。今回、 LLPSにより形成されたp62 bodyがULK1によりリン酸化されると、KEAP1がp62 bodyに隔離され、酸化還元に依存しない形でNRF2が活性化することを明らかにした。この酸化還元に依存しないNRF2活性化が生体内で持続すると、過角化による食道・前胃の閉塞、その結果として栄養失調や脱水による重度の成長遅延が起こることも見出した。この酸化還元に依存しないNRF2が活性化機構をRedox-independent stress responseと名付けた。オートファジーを欠損させたマウス肝臓では、リン酸化されたp62 bodyの大量蓄積を伴った重篤な肝肥大、肝機能障害を引き起こす。リン酸化不能あるいはKEAP1結合不能p62ノックインマウスと肝特異的オートファジー欠損マウスとを交配させたところ、肝特異的オートファジー欠損で確認される肝肥大、肝機能障害が劇的に改善することを見出した。さらに、KEAP1の有無によるp62 bodyのダイナミクスをシミュレーション、試験管内、そして細胞内において検証し、KEAP1の存在によりp62 bodyの性質が変容することを明らかにした。
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