研究課題/領域番号 |
21H04773
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
竹内 秀明 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (00376534)
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研究分担者 |
安齋 賢 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20779467)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | カルシウムイメージング / バイバリーシステム / 光遺伝学 / 配偶者戦略 |
研究実績の概要 |
(1) メダカの全脳イメージング手法の確立:他者からの視覚刺激依存に活性化する脳領域を同定する目的で、カルシウムイメージングの実験系を確立した。遺伝子編集法を介したノックイン法により、神経マーカー遺伝子プロモータの下流でGCaMPを発現する遺伝子改変系統を作成した。プロモータの種類とGCaMPの組み合わせを変えた遺伝子改変系統を複数作成した結果、全脳でGCaMPを強く発現する系統を一系統得ることに成功した。この遺伝子改変メダカの稚魚に対して、スクリーン上に提示した視覚刺激を与えたところ、視覚刺激依存の神経活動を検出することに成功した。 (2) メダカのバイナリー遺伝子発現システムの開発:これまでにTet-ONシステムがメダカでワークをすることを確認した。本年度はメダカでドライバー系統とレポーター系統を掛け合わせることで、任意の神経系に目的の遺伝子を薬物依存に発現誘導するシステムを構築した。神経系プロモータの下流で薬剤依存転写因子(rtTA)を発現するドライバー系統とTet プロモータ下流でGFP発現するレポーター系統を作成して両者を掛け合わせた結果、薬剤投与依存にGFPに発現誘導する系統を作成できた。 (3) メダカを用いた光遺伝学の確立:メダカで光遺伝学の有効性を確認した。チャネルロドプシンを神経系に導入したノックイン系統を作出し、光依存な運動応答の誘発を確認した(Seki.et al., bioRxiv)。 (4) 生育環境依存的な配偶戦略の変容の発見:異性がいない環境で育った性経験のないオスは、初めての性経験の相手となった特定のメスを認知し、積極的に求愛をすることを発見した。十分に性経験をしたオスはメスを見分けずに求愛するため、 生育環境によって、オスの認知能力または行動選択が変容することを発見した(Daimon.et al., Scientific reports)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はメダカ稚魚の全脳イメージング系の確立に成功した。次は同種からの視覚刺激依存に活性化するニューロンを同定する。一方で、異性からの視覚刺激、見知った個体からの視覚刺激によって活性化する神経核を同定するには、成魚を用いたイメージングシステムの確立が必要になる。これとは別のプロジェクトでメダカ脳のシングルセルトランスクリプトームに成功し、賦活化したニューロンの遺伝子発現プロファイルを1細胞レベルで作成するプロトコルを確立した。この手法により視覚刺激依存に活性化するニューロンの遺伝子発現プロファイルを作成し、その遺伝子マーカーを同定することができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
(1) メダカ稚魚の全脳イメージング系を用いて同種個体からの視覚刺激依存に活性化する神経核を網羅的に同定する。さらにシングルセルトランスクリプトームを用いて同種個体からの視覚刺激で賦活化するニューロンのマーカー遺伝子を検索する。 (2) 成魚脳を対象に異性からの視覚刺激依存に活性化したニューロンの遺伝子発現プロファイルを作成し、そのマーカー遺伝子を同定する。 (2) 成魚脳を対象にファイバーフォトメトリーを用いてカルシウムイメージング実験系を確立する。ヒトを含む霊長類では異性からの視覚刺激によって報酬系が活性化するので、メダカ脳で報酬系を同定して異性からの視覚刺激によって活性化するか検定する。これまでにあるドーパミン受容体発現ニューロンを遺伝的にラベルすることで、メダカ報酬系の候補領域を同定している。本研究では異性からの視覚刺激によって当該領域が活性化するか検証する。 (3) メダカでは形、色彩、動きを自由に設定できる3Dポリゴンモデルが作られている。本年度はメダカに3Dポリゴンモデルを提示した時の神経活動活性化状態を記録する。
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