研究課題/領域番号 |
21H04774
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 正幸 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50202338)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | カスパーゼ / 非アポトーシス / 表現度 / 個体差 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
既知の哺乳類カスパーゼの基質を候補とし、ショウジョウバエにおいても切断されるか検討することでBasal Caspase Processing (BCP) の基質を探索した。その結果、細胞分裂時の染色体分離を保証するSpindle Assembly Checkpoint構成因子であるDrosophila BubR1をカスパーゼの新規基質として同定した。さらに、カスパーゼの切断部位としてD451とD571の2カ所を同定した。BubR1切断の生理的意義を解析するため、BACレスキュー法を用いて非切断型BubR1変異体ショウジョウバエ系統を作出した。翅成虫原基を用いた細胞分裂時のライブイメージング解析から、微小管重合をコルヒチンを用いて阻害した時に変異体では野生型と比較して分裂期の延長が観察され、非切断型変異は機能強化変異である可能性が示唆された。マウスを用いた研究から、BubR1の機能強化は健康寿命の延長に寄与することが示されている。そこで、作出した系統の寿命を測定したところ、非切断型変異体で野生型と比較して寿命の延長が確認された。以上の結果から、カスパーゼがBCP基質であるBubR1の切断を介して非細胞死性に寿命を制御する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、近接依存性標識法TurboIDを導入した解析に注力している。これまでに, CRISPR/Cas9法を用いて、カスパーゼのC末端にTurboIDをノックインタグしたショウジョウバエ系統を作出した。その後、質量分析によりカスパーゼの近接タンパク質を網羅的に同定した。ここで、近接タンパク質がカスパーゼ活性に及ぼす影響を評価するために、Gal4/UASシステムにより狙った細胞種のみで高感度にカスパーゼ活性を可視化しつつ、同時に遺伝子操作を可能とする新規高感度カスパーゼ活性レポーター系統 (a gal4-Manipulated Area Specific CaspaseTracker/CasExpress (MASCaT)) を作出した。今後、作出したMASCaTシステムを利用して近接タンパク質がカスパーゼ活性に及ぼす影響を評価する。 また、カスパーゼの細胞内局所に限局した活性の可視化を目的として、FRETを基盤としたカスパーゼ活性検出プローブSCAT3を改良したイメージングシステムの構築を目指している。現在までに、プローブへのオルガネラ局在シグナルの付与、蛍光タンパク質へのmonomeric変異の導入、mKOκ/mKate2 FRETペアの導入、mECFP/mVenus FRETペアとmKOκ/mKate2 FRETペアの同時イメージングを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに新規基質として同定したDrosophila BubR1が、BCPの基質であるかを検討する。具体的には、カスパーゼのC末端にTurboIDをノックインタグしたショウジョウバエ系統を用いて、BubR1がカスパーゼの近接するかを確認する。近接が確認された場合、BubR1が近接するカスパーゼによって非細胞死性に切断されるかを検討する。また、カスパーゼのBACレスキュー法を用いて作出した非切断型BubR1変異体ショウジョウバエ系統において、野生型と比較して寿命の延長が確認された。しかし、個体寿命は遺伝的背景に強い影響を受ける。そこで、戻し交配を行うことで、遺伝的背景の影響を排除し、寿命の延長が真にカスパーゼによる切断によるかを検討する。また、老化や母体環境の次世代に関する代謝の影響についても検討をおこなう。 これまでに作出したMASCaTシステムを利用し、TurboID法及び質量分析を用いて同定したカスパーゼ近接タンパク質群について、カスパーゼ活性に及ぼす影響を評価する。具体的には、ショウジョウバエ成虫の脳においてカスパーゼの高発現が認められるOlfactory Receptor Neuron (ORN) をモデルとして、カスパーゼの活性化を指標としたスクリーニングを実施する。
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