研究課題/領域番号 |
21H04788
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉原 良浩 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (20220717)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 前障 / 大脳皮質 / 徐波 / 大規模ネットワーク / Down state / フィードフォワード抑制 / 光遺伝学 / エンドマイクロスコープ |
研究実績の概要 |
前障(Claustrum)は哺乳類の大脳皮質の内側に位置する薄いシート状の構造であるが、その機能や詳細な神経接続についてはほとんど解明されていない未踏の脳領域である。晩年のFrancis Crickが『意識』に相関した脳活動の考察において、前障が意識を司る脳部位であるという大胆な仮説を提唱した。しかしながら前障の複雑かつ不規則な構造、さらにはマーカー分子・有用遺伝子ツールの欠如などが障壁となり、この興味深い仮説の実験的検証には未だ至っていない。私たちは最近、前障ニューロン特異的にDNA組換え酵素Creを発現するトランスジェニックマウス系統(Cla-Cre#1マウス)を用いて、前障が大脳皮質の徐波活動を制御することを見出した(Nat. Neurosci. 2020)。本研究では新たに樹立したマウス系統(Cla-Cre#2、Cla-tTA)を加えて、光/化学遺伝学・生理学・行動学・解剖学など多様な実験手法を統合的に組み合わせ、Crickの仮説の検証とともに未知の脳領域である前障の機能解明に挑戦する。2021年度においては、前障から大脳皮質への詳細な軸索投射パターンを明らかにする目的で、逆行感染性Cre依存的レポーター発現アデノ随伴ウイルスを駆使した神経解剖学的解析を行った。その結果、前障のCre発現ニューロンは、特定の大脳皮質領域に軸索を投射する背側ドメインニューロンと、別の大脳皮質領域に軸索を投射留守腹側ドメインニューロンの2つに大別できることが判明した。この結果から、前障が大脳皮質大規模ネットワークをコントロールするハブとして機能する、という仮説を導き出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前障から大脳皮質への詳細な軸索投射パターンを解析することによって、「前障が大脳皮質大規模ネットワークをコントロールするハブとして機能する」という新たな仮説を導き出すことができた。このことから本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、神経解剖学的解析をさらに大きく展開するとともに、生理学・行動学的解析を組み合わせることによって、前障の背側ドメインと腹側ドメインの機能的差異の解明へと向かう。
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