研究課題/領域番号 |
21H04794
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
二木 史朗 京都大学, 化学研究所, 教授 (50199402)
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研究分担者 |
樋口 ゆり子 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40402797)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 抗体 / 一本鎖抗体 / 細胞内送達 |
研究実績の概要 |
本研究は、送達ペプチドを用いたin vivoレベルでの抗体(IgG)ならびに一本鎖抗体(scFv)の細胞内(サイトゾル)送達を可能とする指針を得ることを目的としている。in vivoにおける送達では、物性の違いにより体内挙動が異なるペプチドとIgG、scFvを同時に標的細胞に送達することが必要であり、これを可能とする効果的な複合体形成法を樹立する事を目指した。複合化のアプローチの一つとして、IgGのFc領域に親和性を示すペプチドと当研究室で開発した細胞内抗体送達ペプチドL17Eの3量体FcB(L17E)3を調製した。細胞内可視化のためにAlexa Fluor 488標識IgG [IgG(AF488)]とFcB(L17E)3を混合後細胞に投与したところ、IgGの顕著な細胞内移行が確認された。当初、エンドサイトーシスによる細胞へのIgG取り込みを予想していたが、予想に反して、FcB(L17E)3とIgG(AF488)がコアセルベートを形成し、これが細胞膜と接することで効果的な送達が達成されることが明らかになった。成果をAngew. Chem. Int. Ed.誌に報告するとともに、関連学会等でも発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FcB(L17E)3に対応するそれぞれのペプチド断片を固相合成し、選択的ジスルフィド架橋することにより調製した。IgG(AF488)と混合することで、直径2 μm程度のコアセルベート(液滴)が形成されることを確認した。AF488はその分子内にスルホン酸を2個有していることや、AF488なしのIgGではコアセルベート形成もIgGの細胞内移行も見られなかったことから、FcB(L17E)3とIgG(AF488)の間のコアセルベート形成には、分子間での疎水性相互作用と静電的相互作用が重要であることが示唆された。この結果は、Angew. Chem. Int. Ed.のVery important paper (VIP, top 5%)として採択され、概念図は表紙カバーに採用された。別途、IgG含有脂質ナノ粒子の調製法に関しても検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
コアセルベートを介した抗体の細胞内導入とその効率は従来の常識を打破する画期的なものであり、今後はその導入原理と一般性、あるいは細胞選択性等に関しての検討を深める。また、脂質ナノ粒子を用いたIgGの細胞内導入における適用性に関しても検討を深める。良い結果が得られた系に対して、マウス実験を行い、in vivoへの適用可能性を探る。
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