応募者らは、マウスの視床下部の一部の小領域(前腹側脳室周囲核= AVPe)に存在し、神経ペプチドQRFP遺伝子を発現する約800個あまりのニューロンからなる神経細胞集団(Qニューロン)を特異的に興奮させると、体温が数日間に渡って環境温度付近まで大きく低下し、併せて代謝も著しく低下することを明らかにした。この状態(QIH)は様々な点で冬眠動物にみられる冬眠に酷似していた。本計画ではQニューロンのターゲットニューロンを同定して、その神経回路・作用機序を探ることにより冬眠様状態を誘導するメカニズムを探るとともにQニューロンの生理的役割をあきらかにすることを目的として研究計画を立案した。今年度は、TRAP2マウスを用いて、視床下部背内側核(DMH)において、QIH導入直後に興奮するニューロンの同定を試みた。DMHにおいて、QIH導入直後に興奮する神経細胞群を同定した。現在、その化学遺伝学的あるいは光遺伝学的操作、および投射先の同定を目指して研究を進めている。一方、メラノプシンを改変した光遺伝学ツールによって、効率的に光駆動のQIHを極めて弱い光強度にて長時間にわたり導入することに成功した。この系を用いることにより、時間分解能的に優れた系でQIH中の生理機能を探索できることが期待される。現在、QIHによる体内時計機能への影響、睡眠への影響の検討を行っている。今後、記憶や自律神経系への影響を探索していきたい。
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