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2022 年度 実績報告書

制御性T細胞による適応的免疫制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H04801
研究機関東京大学

研究代表者

堀 昌平  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)

研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2024-03-31
キーワード制御性T細胞 / 免疫制御 / 自己免疫疾患 / T細胞受容体
研究実績の概要

本研究では、Tregが組織環境の変化に対して適応的に遺伝子発現を変化させて免疫応答を制御するメカニズムの解明を目指している。
(A) Foxp3とBATFの協同によるTCR依存的組織適応メカニズム:野生型Treg、Tconv、Foxp3 R397W変異Treg、BATF欠損TregのscMultiome解析を行い、Foxp3とBATFが協調的にエフェクターTreg特異的なオープンクロマチン領域とそれら遺伝子の発現を促進することを明らかにした。また、Foxp3とBATFが協調的にエフェクターTregの分化を促進するin vitro系を構築した:ナイーブCD4 T細胞にFoxp3とBATFを強制発現させてTCR刺激を加えることで、エフェクターTregと類似した遺伝子発現を示すことを明らかにした。
(B) TCR依存的Treg組織適応におけるFoxp3/c-Myc経路の役割とメカニズム:Foxp3 A384T変異がエフェクターTreg選択的にTCR刺激依存的なc-Myc発現誘導と増殖を障害することを明らかにした。そして、その分子機構を明らかにするためにCUT&Tag法のセットアップを進めた。
(C) Treg組織適応制御におけるエフェクターTregの不均一性とクローン選択の意義:これまでの一細胞RNA&TCR-seq解析により、Foxp3 A384T変異により強いTCRシグナルを受けて組織内に浸潤し増殖したエフェクターTregクローンが欠損することを明らかにし、それらTCRクロノタイプを4種類同定した。今年度、これらのうち1つによりA384Tマウスの肺の炎症を抑制する機能をTregに賦与できることを見いだした。そして、TCRレトロジェニックマウスを作製した結果、このTCRクロノタイプを発現する細胞はTregに分化し、肺所属リンパ節に集積して活性化することを見いだした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(A) Foxp3とBATFの協同によるTCR依存的組織適応メカニズム:scMultiome解析により、Foxp3とBATFが協同してエフェクターTreg分化をトランスクリプトームとエピゲノムのレベルで制御していることを詳細に明らかにしたことは重要な成果であると判断している。そして、エフェクターTreg分化を再現するin vitro系を構築することに成功したことは、Foxp3とBATFによるエフェクターTreg分化制御メカニズムを解明する上でマイルストーンとなる成果と考えている。
(B) TCR依存的Treg組織適応におけるFoxp3/c-Myc経路の役割とメカニズム:Foxp3 A384T変異が強いTCRシグナルを受けたTregのクローン増殖を障害するメカニズムを解明するうえで、少数細胞を用いてFoxp3の結合領域を全ゲノムレベルで同定することが鍵となる。Foxp3 CUT&Tag法のセットアップに目処がたったのは大きな一歩と考えている。
(C) Treg組織適応制御におけるエフェクターTregの不均一性とクローン選択の意義:Foxp3 A384T変異によりクローン増殖が障害される肺Treg特異的TCRクロノタイプが、変異マウスにおける肺の炎症を抑制したという結果は、Tregによる免疫制御の抗原特異性を解明するうえで重要な一歩であり、大きな成果であると考えている。
以上の経緯・結果から、研究は順調に進んでいると判断している。

今後の研究の推進方策

(A) Foxp3とBATFの協同によるTCR依存的組織適応メカニズム:今年度構築したin vitro系を利用してFoxp3とBATFによるエフェクターTreg分化メカニズムの解明を進める。具体的には、両者により発現が協調的に制御される遺伝子の一つであるCtla4に着目し、両者によりアクセシビリティーが促進されるオープンクロマチン領域がエンハンサーとして働くのか、そのためにはそこに含まれるFoxp3認識配列が必要であるのか検証する。また、Foxp3とBATFの機能的・物理的相互作用にIRF4が必要か明らかにする。
(B) TCR依存的Treg組織適応におけるFoxp3/c-Myc経路の役割とメカニズム:A384T Tregにおけるc-Myc経路の破綻が生体内におけるTregの組織集積障害に寄与するか検証する。また、A384T変異体によるc-Myc経路障害の分子機構を明らかにするために、活性化させたナイーブ型Tregとエフェクター型Tregを用いてFoxp3 CUT&Tag解析を進める。
(C) Treg組織適応制御におけるエフェクターTregの不均一性とクローン選択の意義:注目している他のTCRクロノタイプについても機能解析を進める。TCRレトロジェニックマウスとトランスジェニックマウスの作製を行い、これらのTCRによりTregがどの組織で分化し肺組織選択的に集積するか、炎症を肺組織選択的に抑制するか解析し、抗原特異性を明らかにする。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Functional Analysis of Foxp3 and Its Mutants by Retroviral Transduction of Murine Primary CD4+ T Cells2023

    • 著者名/発表者名
      Nakajima A, Murakami R, Hori S
    • 雑誌名

      Methods in Molecular Biology

      巻: 2559 ページ: 79-94

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-2647-4_7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Neuropilin-1 (NRP1) expression distinguishes self-reactive helper T cells in systemic autoimmune disease.2022

    • 著者名/発表者名
      Raveney BJ, El-Darawish Y, Sato W, Arinuma Y, Yamaoka K, Hori S, Yamamura T, Oki S
    • 雑誌名

      EMBO Molecular Medicine

      巻: 14 ページ: e15864

    • DOI

      10.15252/emmm.202215864

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Whole-embryonic identification of maternal microchimeric cell types in mouse using single-cell RNA sequencing2022

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto K, Nakajima A, Hori S, Tanaka Y, Shirasaki Y, Uemura S, Irie N
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 18313

    • DOI

      10.1038/s41598-022-20781-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Molecular control of Treg cell differentiation and function by Foxp3 and TCR signals.2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      2022 FIMSA Advanced Immunology Course
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Molecular control of Treg cell function by Foxp3 and TCR signals.2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      ImmunOctoberfest 2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Control of regulatory T cell differentiation and function by the transcription factor Foxp3 and the T cell receptordependent recognition of immunological self.2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Molecular control of Treg cell differentiation and function by Foxp3 and TCR signals.2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Foxp3 A384T変異は制御性T 細胞のTCR 刺激依存的な増殖をBatf発現抑制非依存的に障害する2022

    • 著者名/発表者名
      川越紗,村上龍一,堀昌平
    • 学会等名
      第31回Kyoto T Cell Conference
  • [学会発表] 制御性T細胞選択的BATF発現増強マウスの解析2022

    • 著者名/発表者名
      松浦宏大,村上龍一,堀昌平
    • 学会等名
      第31回Kyoto T Cell Conference
  • [学会発表] MHCクラスII分子はCD4 T細胞非依存的に大腸CD8 T細胞の活性化を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      千菊智也,堀昌平,瀬戸口留可
    • 学会等名
      第21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム2022
  • [学会発表] The Foxp3 A384T mutation impairs TCR-induced proliferation of effector regulatory T cells by interfering with c-Myc induction2022

    • 著者名/発表者名
      Suzu Kawagoe, Maori Oda, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Robust TCR signals control epigenetic conversion of conventional T cells to regulatory T cells through mTORC1-dependent expression of TET proteins2022

    • 著者名/発表者名
      Tomohide Kinoshita, Mai Ohno, Norihito Hayatsu, Reiko Ohnishi, Akira Nakajima, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Tissue-specific deficiency of clonally expanded regulatory T cells underlies tissue-restricted inflammation in Foxp3 A384T mutant mice2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshimichi Hoshiya, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Foxp3-transduced T cells acquire regulatory T cell-like epigenome, gene expression, and suppressive activity in vivo2022

    • 著者名/発表者名
      Yuxi Wei, Shotaro Funatsu, Ryuichi Murakami, Akira Nakajima, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] BATF-overexpressing Treg cells show enhanced tissue accumulation and suppressive ability in vivo2022

    • 著者名/発表者名
      Kohta Matsuura, Akihiko Kimura, Takahisa Miyao, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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