研究課題/領域番号 |
21H04808
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
玉田 耕治 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00615841)
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研究分担者 |
佐古田 幸美 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30629754)
城崎 幸介 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80721323)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / 新規CAR-T細胞療法 / エピトープスプレッディング |
研究実績の概要 |
研究計画1年目として、(1)7x19 CAR-T細胞療法におけるepitope spreadingの検討と(2)腫瘍局所の樹状細胞によるcross presentationの検討、に取り組んだ。実験モデルとして、CAR標的のCD20分子、がん細胞内在性抗原のOVA(ovalbumin)を共発現するB16メラノーマ細胞(B16-CD20/OVA)を樹立した。B16-CD20/OVAを皮下接種したC57BL/6(B6)マウスにCD20認識CAR-T細胞を静脈内投与した後、経時的に腫瘍所属リンパ節細胞と脾細胞を採取し、ホスト由来T細胞のH-2Kb拘束性OVAペプチド(SIINFEKL)に対する反応性をIFN-γの産生にて評価した。その結果、7x19 CAR-T細胞を投与されたマウスから分離したホスト由来T細胞は、通常のCAR-T細胞を投与されたマウスから分離したホスト由来T細胞に比べて、OVAペプチドに対して高い反応性を示した。このことから、7x19 CAR-T細胞は腫瘍内在性抗原に対するepitope spreadingを効率的に誘導することが示された。また、同様の実験モデルにおいて、腫瘍所属リンパ節細胞からCD11c陽性の樹状細胞を分離し、OVAペプチド特異的TCR(T cell receptor)を有するOT-I T細胞と共培養し、OT-I T細胞の活性化誘導についてIFN-γの産生にて評価した。その結果、OT-I T細胞は7x19 CAR-T細胞を投与されたマウスから分離した樹状細胞に反応した一方で、通常のCAR-T細胞を投与されたマウスから分離した樹状細胞には反応しなかった。このことから、7x19 CAR-T細胞による治療が樹状細胞による腫瘍抗原のcross presentationを促進することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年間の研究計画の1年目であり、研究計画に示された実験はほぼ予定通り実施された。7x19 CAR-T細胞の投与によるepitope spreading及びcross presentationの誘導を示唆する知見が得られ、予定通りの進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画1年目の検討により、がん細胞内在性抗原としてOVA を用いたモデルにおいて7x19 CAR-T細胞の投与がepitope spreading及びcross presentationを誘導することが示された。そこで、今後はより臨床に近いモデルとして、内在性のネオ抗原(腫瘍特異的変異蛋白に由来する腫瘍抗原)においても同様の結果が得られるかどうかを検討する。実験モデルとしては、Adpgk、Reps1、Dpagt1という3つのネオ抗原が存在することが知られているマウス大腸がん細胞株MC38を用いる。また、7x19 CAR-T細胞療法ではepitope spreadingによりホスト由来T細胞による内在性がん抗原への反応を誘導するため、この効果は抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤によりさらに増強しうることが予想される。そこで、この仮説を検証するため、7x19 CAR-T細胞もしくは通常のCAR-T細胞による治療と抗PD-1抗体治療の併用効果について検討する。
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