研究課題
1年目の研究成果により、CAR標的のCD20分子とがん細胞内在性抗原のOVA(ovalbumin)を共発現するB16メラノーマ細胞(B16-CD20/OVA)を皮下接種したマウスモデルにおいて、IL-7とCCL19を同時に産生するように遺伝子改変を加えたCAR-T細胞(7x19 CAR-T細胞)の投与により優れた治療効果を発揮するとともに、ホスト由来T細胞が内在性がん抗原であるOVAに対する反応性も獲得することを証明した。さらに、これらのマウスから採取した樹状細胞はMHC class I拘束性にOVA抗原ペプチドを提示していることを確認した。これらの結果から、7x19 CAR-T細胞は樹状細胞によるCross presentationを介したEpitope spreadingを誘導することにより抗腫瘍効果を発揮していることが示された。これらの成果に基づき、2年目はより臨床に近いモデルとして、内在性のネオ抗原(腫瘍特異的変異蛋白に由来する腫瘍抗原)においても同様の結果が得られるかどうかを検討した。実験モデルとしては、Adpgk、Reps1、Dpagt1という3つのネオ抗原が存在することが知られているマウス大腸がん細胞株MC38を用いた。その結果、7x19 CAR-T細胞は内在性のネオ抗原に対してもEpitope spreadingを誘導することが示された。さらに、7x19 CAR-T細胞によるがん治療効果が抗PD-1抗体との併用によりさらに増強することを実証した。これらの結果は、7x19 CAR-T細胞がネオ抗原を含めた腫瘍抗原に特異的な内在性T細胞の活性化を誘導し、それらの抗腫瘍効果は免疫チェックポイント阻害薬との併用により増強することが示しており、本治療法の臨床的意義が確認された。
2: おおむね順調に進展している
4年間の研究計画の2年目であり、研究計画に示された実験はほぼ予定通り実施された。7x19 CAR-T細胞の投与により、腫瘍特異的変異蛋白に由来するネオ抗原に対するepitope spreadingが誘導されていること、免疫チェックポイント阻害薬との併用により抗腫瘍効果が増強されることを示す知見が得られ、予定通りの進捗であった。
2023年度は「課題2.7x19 CAR-T細胞により誘導される抗腫瘍免疫応答のフェノタイプ解析」に取り組む。これまでの我々の研究成果により、7x19 CAR-T細胞の抗腫瘍効果には投与したCAR-T細胞のみならず、ホスト由来のT細胞も重要な役割を有していることが示されている。また、T細胞以外の免疫細胞も関与している可能性も考えられる。そこで、これらの細胞群がどのようなフェノタイプを有し、どのような機能を発揮しているのか、という点についてフローサイトメトリー及びTCRレパトア解析により検討する。具体的には、Thy1.1/1.2 congenicマウス系を用いてホストT細胞と投与CAR-T細胞を区別し、それぞれを分離して採取したのち様々なフェノタイプ解析を実施する。また、ホスト由来の樹状細胞のフェノタイプについても解析する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 13件)
Hepatol Res.
巻: - ページ: -
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