研究課題/領域番号 |
21H04812
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
古屋敷 智之 神戸大学, 医学研究科, 教授 (20362478)
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研究分担者 |
小坂田 文隆 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (60455334)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | レジリエンス / 慢性ストレス / 老化 / 全脳イメージング / 一細胞オミクス解析 |
研究実績の概要 |
心の病には社会からのストレスや老化など後天的な要因が深く関わる。マウスの慢性ストレスは脳内外の炎症反応によりうつ・不安様行動を誘導する。慢性ストレスや老化による行動変化には個体差があり、レジリエンスの存在が示唆される。また即効性抗うつ薬や特定の環境・生活習慣がレジリエンスを増強することも知られる。しかしこれらレジリエンスの生物学的実態は不明である。本研究では、慢性ストレスや脳機能老化に対するレジリエンスを担う神経回路・脳組織リモデリング・脳末梢連関を解明する。本年度は以下の研究を実施した。 項目1.慢性社会ストレスによる脳機能障害に対するレジリエンスの機序の解明:慢性社会ストレス後のマウスの全脳イメージングを実施し、解析に着手した。G欠損型狂犬病ウイルスベクターを用い、慢性社会ストレスにより影響を受ける前頭前皮質への神経入力を系統的に調べた。前頭前皮質等での炎症性細胞および全細胞集団の一細胞オミクス解析を実施し、解析に着手した。レジリエンス関連代謝物の合成酵素欠損マウスを作出し、行動実験や組織・細胞変化を調べている。並行してインビボ神経活動実験を立ち上げた。 項目2.老化による脳機能障害に対するレジリエンスの機序の解明:老化マウスのうつ・不安様行動や認知機能低下を調べ、脳機能障害を示す老化感受性群と示さない老化抵抗性群を分類する実験系を確立した。神経活動の全脳イメージングを実施し、解析を進めた。前頭前皮質でのオミクス解析を実施し、解析を進めた。 項目3.即効性抗うつ薬や特定の環境・生活習慣によるレジリエンス増強の機序の解明:レジリエンスを増強しうる低用量ケタミン投与などが慢性ストレス・脳機能老化に与える影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、慢性ストレスや脳機能老化に対するレジリエンスを担う神経回路・脳組織リモデリング・脳末梢連関の実態とメカニズムを解明するものであるが、いずれの項目についても研究が推進されている。さらにオミクス解析により慢性ストレスに対するレジリエンス、脳機能老化に対するレジリエンスと相関する分子群も同定しており、今後レジリエンスとの因果関係を調べる段階に進展している。レジリエンス関連代謝物の合成酵素欠損マウスでは少数例ながらレジリエンス障害を示唆する行動異常を見出しつつある。以上の研究成果から、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
項目1.慢性社会ストレスによる脳機能障害に対するレジリエンスの機序の解明:これまでの解析を継続しつつ、神経活動計測・操作や薬理・遺伝学的分子操作も実施し、慢性ストレスに対するレジリエンスを担う脳領域・神経投射・神経細胞種を同定し、当該細胞での神経活動や周囲の炎症性細胞の変化を調べる。レジリエンス関連代謝物との関連にも迫る。 項目2.老化による脳機能障害に対するレジリエンスの機序の解明:これまでの解析を継続しつつ、神経活動計測・操作や薬理・遺伝学的分子操作も実施し、脳機能老化に対するレジリエンスを担う分子機序やその標的となる神経投射・神経細胞種を調べる。 項目3.即効性抗うつ薬や特定の環境・生活習慣によるレジリエンス増強の機序の解明:今年度はこれまでの解析を継続しつつ、レジリエンス増強が見られる操作について全脳イメージングやオミクス解析等を実施する。
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