現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集技術を利用した次世代染色体工学的手法を用いて、1q21.1欠失、重複CNVを有するヒトES細胞モデルを作製した。ヒトES細胞をNPCオルガノイドに分化させ、形態的特徴を観察した。培養27日目には、1q欠失及び重複NPCオルガノイドは、CTRLと比較して、それぞれ有意に小さくまたは大きくなり、臨床データ(小頭症、大頭症)と一致する結果が得られた。NPCオルガノイドにおける重複・欠損のサイズ差は、各細胞のサイズではなく、オルガノイド内の細胞数に起因するものであった。1q21.1CNVが分化パターンと遺伝子発現プロファイルに影響を与えるかどうかを、免疫組織化学及びRT-qPCRによって調べた。NPCオルガノイド培養27日目に、1q欠失オルガノイドはTBR2及びTUBBのシグナル強度が最も高かったが、1q重複はいずれもほとんどシグナルを示さなかった。58日目には、TBR2とCTIP2の両方の発現が1q重複で低くなっていた。これらから、1q欠失では神経細胞の成熟が促進され、1q重複ではNPC段階から成熟が減速していることがわかった。ヒトES細胞モデル由来の2次元神経細胞の自発的な電気活動を、多電極アレイを用いて検討した。1q21.1CNV神経細胞は、興奮性の高い電気的特性を示した。27日目のNPCオルガノイドを用いて単一細胞RNA配列解析を行った。32,171個の細胞(1q欠失; 10,682, 1q重複; 11,987, CTRL; 9,502)対して、マーカー遺伝子の発現パターンに基づき、8つのクラスターを設定した。GABA作動性細胞がほぼ1q欠失由来であったことは、成熟レベルの違いを示していると考えられた。
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