非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は代謝関連脂肪性肝疾患(MAFLD)の1病型であり、肝硬変および肝細胞癌に進行する可能性のあること、罹患者が増加していることから世界的な問題となっている。しかしながら、その病因・病態は多彩であり、十分な病態解明には至っていない。一方、ヒト肝細胞キメラマウス(以下、キメラマウス)は生後間もなく肝不全を発症する高度の免疫不全マウス(cDNA-uPA+/+/SCID+/+マウス)にヒト肝細胞を移植したマウスであり、マウス肝臓が高度にヒト肝細胞に置換されている。同マウスのヒト肝細胞は、マウス成長ホルモン(GH)への反応性は乏しく、自然経過での肝臓の脂肪化が報告されている。本研究では、ヒト肝細胞キメラマウスにフルクトース含有高コレステロール食(GAN食)の給餌やヒト肝細胞キメラマウスにヒトGH(hGH)の投与を実施することで、マウス肝組織の脂肪化を制御し、マウス肝組織のマルチオミックス解析による病態解析を行った。12頭のキメラマウスを食餌の種類(GAN食もしくは通常食(CRF1食))及びhGH投与の有無により4群に群別し(各群3頭)、8週間の処置後にマウス肝組織を採取した。マウス肝組織よりヒト肝細胞を抽出し、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクス分析を行った。mixOmics解析では、hGH投与に関連する遺伝子は IL2/STAT5、GAN食給餌に関連する遺伝子はコレステロール合成および脂肪酸代謝経路に強く関与していることが示された。一方、3次元オミックス座標を作成したところ、各群が独立してクラスター化され、さらに、MiBiOmics解析にてペリリピン-2(PLIN2)がco-inertia driverとして同定された。以上の結果を論文としてScientific Reportsに発表した。
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