研究課題/領域番号 |
21H04827
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤司 浩一 九州大学, 医学研究院, 教授 (80380385)
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研究分担者 |
加藤 光次 九州大学, 大学病院, 講師 (20571764)
菊繁 吉謙 九州大学, 大学病院, 講師 (40619706)
宮本 敏浩 九州大学, 医学研究院, 准教授 (70343324)
森 康雄 九州大学, 大学病院, 助教 (90573345)
仙波 雄一郎 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD) (90816787)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / TIM-3 / 白血病幹細胞 |
研究実績の概要 |
申請者らは、ヒト急性骨髄性白血病 (AML) 幹細胞にTIM-3分子が特異的に発現し、AML幹細胞はTIM-3のリガンドGalectin-9を分泌することで恒常的なTIM-3シグナルが生じていることを報告した。現在では、TIM-3シグナルを遮断する抗ヒトTIM-3抗体によるAML/MDS治療は、その有効性を検証するPhase3 studyが始まっており、TIM-3シグナル阻害によるヒト白血病幹細胞を標的とした治療法の確立が目前となっている。そこで、本研究計画においては、未だ未解明であるヒト白血病幹細胞特異的なTIM-3シグナルの下流シグナル伝達分子群の同定にマルチオミクス手法を用いて取り組み、同時に、その下流で白血病幹細胞性維持に必須の分子メカニズム解明を行う。これらの研究遂行により、世界に先駆けてヒト白血病幹細胞におけるTIM-3分子の包括的機能解明を行うことを本研究の目的とする。2021年度はTIM-3シグナルの下流分子の探索および、TIM-3シグナルが制御する白血病幹細胞の代謝特性についての研究を中心的に取り組んだ。その結果、以下の2点について明確にすることができた。一つはヒト白血病幹細胞特異的なTIM-3下流エフェクター分子としてHCK ,p120cateninを同定した。これらのエフェクター分子はT細胞と異なりヒト白血病幹細胞に特異的な下流分子であり、下流のcanonical Wnt pathway活性化を効率的にgalectin-9 autocrine loopにより誘導していることを見出した。また、これらのシグナルに必須のリン酸化部位についても同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は当初の予定通り概ね順調に進捗できていると考える。研究計画に記載のあったTIM-3シグナルの下流エフェクター分子群については、ヒト白血病幹細胞に特異的な分子群の同定とシグナルに必要なリン酸化部位の同定を完了した。この研究の遂行により、同じTIM -3シグナルが白血病幹細胞では強力な自己複製シグナルになるのに対して、T細胞においては疲弊化を誘導するメカニズムについて、下流エフェクター分子群の違いによって理解することが可能になった。また、TIM-3シグナルが制御する代謝特性については、分岐鎖アミノ酸以外にも新規代謝経路を同定し、2022年度はこれらの代謝経路が制御するミトコンドリア機能についても検討を行う予定としている。分岐鎖アミノ酸代謝についての研究も順調に経過しており、すでに論文投稿中である。また、潜伏期白血病幹細胞研究については、single cell RNA-seqによる解析手法の確立およびデータ取得を数症例で完了し、現在、多数症例での解析に取りかかる段階である。これらの経過から2021年度は当初の予定通り概ね順調に進捗できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画においては、申請書に記載する通りに以下の3つの研究を本研究の柱とし、TIM-3を軸とした骨髄系腫瘍共通のがん幹細胞制御機構と、それを標的とする治療法開発の基盤を創出する。2022年度は下記について詳細に検討を進める。1. TIM-3シグナルが制御する自己複製、増殖機構の解明(β-cateninとmTOR) 2. TIM-3シグナルが制御する未分化性維持機構の解明 (ミトコンドリア代謝制御機構)3. 治療抵抗性TIM-3+白血病幹細胞が、潜伏期に依存する分子機構の解明 1については、具体的には先行研究から得られたTIM-3シグナルが新規のcanonical Wnt pathway活性化経路であることを証明するために、すでに白血病幹細胞特異的に発現するTIM-3シグナル下流分子、HCK及びp120cateninについてエフェクター分子であることを確認したので、今年度はT細胞における疲弊化シグナルとの差異を明確にする。 2については、新規研究計画としてTIM-3シグナルの下流で制御を受けるユニークな代謝経路Aを同定しており、それがミトコンドリア制御に関与している可能性について本年度は検討を行う。3については、すでに確立したsingle cell RNA-seq解析系を運用して多数症例での残存白血病幹細胞の遺伝子発現プロファイルデータベース構築に取り組む。昨年度の解析からユニークな潜伏期TIM-3陽性白血病幹細胞の遺伝子発現プロファイルを見出しており、本年度も継続して解析に取り組む。
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