研究課題/領域番号 |
21H04831
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 浩文 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30322184)
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研究分担者 |
安藤 幸滋 九州大学, 大学病院, 助教 (20608864)
中川 貴之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40447363)
赤井 周司 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (60192457)
横山 雄起 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60615714)
伊藤 心二 九州大学, 大学病院, 講師 (90382423)
江口 英利 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90542118)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 腫瘍間質 / 高分子薬剤 / 効果増強 |
研究実績の概要 |
これまで薬剤の中心であった低分子化合物が枯渇しつつあり、抗体医薬や細胞療法などの「高分子型抗がん剤」の開発が行われ、オプジーボや、CAR-T細胞療法など有望な新薬が少しずつ臨床の場に登場している。しかし、これら最新医療をもってしても、固形癌に対しては高い奏効率を得ることができないことから薬剤側の開発だけでは限界がある。本研究では、癌の微小環境の改善を目指し、腫瘍側の治療抵抗因子である固形癌の間質バリアをbreakする有効な方策を創出して、高分子製剤のもつ本来の効能を最大限に引き出すことを目的とした。初年度に大腸癌細胞株を用いてIntegrin beta1とTGF-beta1のsiRNA構造の最適化を行った後に、ヌードマウスに、HT29細胞を移植して皮下腫瘍を造り、sCA(スーパーアパタイトナノデリバリー粒子)iv、ICG ipを併用し、IVISで腫瘍部でのICGの蛍光を測定すると、ICG ip単独に比べて、sCA併用によって有意に腫瘍へのICGの取り込みが増加した。次にsCAにTGF beta1-siRNA,あるいはIntergrin beta1-siRNAを搭載したものをivしてから高分子ポリマー型抗癌剤であるP-THP (Poly (N- (2-Hydroxypropyl) methacrylamide (PHPMA) 結合型pirarubicin (THP))を静注した場合、Integrin beta1を阻害すると、マウス腫瘍へのP-THPの取り込みが上昇したが、TGF-beta1-siRNAによる腫瘍集積性の増加は限定的であった。TGF-beta1による間質への影響は線維化が主体であるので、急性期反応としての効果は出にくく、中期~長期の投与で検討する必要があるのかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はin vitroでsiRNAの最適化を行い、それらを用いて多くの動物実験を行った。蛍光物質の濃度やsCA、核酸の濃度、核酸の前投与としての回数(1-3回)、蛍光物質を投与してから腫瘍へのuptakeを測定するタイミングなど多くのパラメーターを決定するために、繰り返しマウスを用いたテストを行い、相当の実験量をこなした。その結果、Integrin beta1-siRNAによる腫瘍への高分子蛍光物質のuptakeの増加を達成することができたことから、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
Integrin beta1のsiRNAによる蛋白のノックダウンは70%に留まるため、新たに5種のsiRNAを設計した。これを使ってより効果的な間質阻害を実現するべく検討を進める。実際に圧センサーで腫瘍内の間質圧を測定する。Integrin beta1以外の標的を探すために、sCAを投与した群と、無治療群とで腫瘍をRNAシークエンスに提出済であり、新たな標的分子についての検討を進める。蛋白レベルでの変化もプロテオミクスなどにより分析する必要があるかもしれない。分担者の東大獣医外科 中川先生と固形癌で極めて難治性といわれるネコ乳癌への治療対策と安全性試験を行う。もう一つのスキームとしてCa-Mgバランスを変化させることで迅速にインテグリンの分子構造を変化させることもsCA単独で可能であるが、実用化のためにはカルシウムの毒性を厳密に評価する必要がある。更にsCAの進化型のiNaDを使えば安全性を担保することが出来る可能性があり、この点についても検討する。
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