研究課題
現在までの報告から、CREBHの過剰発現は生活習慣病を改善させることが想定されていることから、組織特異的・時期特異的にCREBHの発現を上昇させ、病態への影響を検討できるように、CREBH flox Tgマウスを作成した。さらに、そのマウスからCREBH肝臓特異的過剰発現(CREBH L-Tg)マウスを新たに作成した。このマウスでは想定通り、血中の血糖値、インスリン値、トリグリセライド値は有意に低下した。しかしながら、生後の成長に遅延が生じた。このマウスは血中の成長ホルモンが異常高値、IGF1が異常低値を示し、重篤な成長ホルモン抵抗性を示した。肝臓で成長ホルモンは細胞膜上のその受容体に結合し、細胞内シグナル伝達を増強させ、IGF1の発現を誘導する。しかしながら、CREBH L-Tgマウスでは成長ホルモン受容体の発現が消失したため、その後のシグナル伝達も遮断され、成長が遅延した。加えて、IGF1の拮抗分子であるIGFBP1が上昇しており、IGF1自体の機能の抑制も原因の一つとして考えられた。CREBHの代表的な標的遺伝子であるFGF21もすでに成長抑制を示すことが報告されており、このマウスでもFGF21が上昇しており、成長遅延に寄与したと想定できた。しかしながら、CREBH L-TgマウスとFGF21 KOマウスを交配しても、成長遅延は生じたことから、CREBH L-Tgマウスの成長遅延にはFGF21の寄与は大きくなかった。CREBHによる成長遅延は複数の経路による複合的な作用の結果であることを明らかにした(Nakagawa FASEB J 2021)。
2: おおむね順調に進展している
CREBH過剰発現マウスで見られる成長遅延の表現型についてすでに論文報告を行っている(Nakagawa FASEB J 2021)。CREBH KOマウスは高フルクトース食負荷時に非アルコール性脂肪肝を増悪化するが、その際に他の転写因子との相互作用が原因の一つであることを見出している。また、CREBHに糖鎖が負荷されることでタンパクの分解が抑制され安定化し、活性が上昇するメカニズムを新たに見出し、その糖鎖付加酵素も同定できている。現在、これら成果について、論文投稿の準備をしている。
CREBH KOマウスに非アルコール性脂肪肝を発症させる餌を負荷した際に病態が増悪化する。その時の肝臓での遺伝子発現について網羅的に解析し、ある生理的機能に異常が生じることを見出している。原因となる変化する遺伝子の発現にCREBHが直接影響を及ぼしているかをChIP-seqのデータから解析を進めていく。マウスレベルだけでなく、細胞レベルでCREBHの寄与について詳細に検討することで、新たな病態形成の原因メカニズムを同定していく予定である。CREBH KOマウスへの高脂肪・高ショ糖食負荷により、肝がんを発症させるが、CREBHが発現する肝臓と小腸のどちらが原因となるっているかを検討するために、それぞれの組織特異的なCREBH KOマウスで検討を行う。しかしながら、長期間負荷が必要であるため、今後は短期間で肝がんを発症させられる系も用い解析を進めていく予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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