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2023 年度 実績報告書

腸肝連関における脂質代謝異常が誘導する肝がん発症メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H04861
研究機関富山大学

研究代表者

中川 嘉  富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (80361351)

研究分担者 島野 仁  筑波大学, 医学医療系, 教授 (20251241)
長谷 耕二  慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (20359714)
戸邉 一之  富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (30251242)
樋上 賀一  東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 教授 (90253640)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2025-03-31
キーワード生活習慣病
研究実績の概要

CREBHの発現は絶食時に上昇する。翻訳されたCREBHタンパクは膜貫通領域を持つ未成熟型として合成される。膜貫通領域が切断され、初めて活性型となる。しかしながら、これ以外のCREBHの活性化機構についてはほとんど知見がない。高フルクトース食で脂肪肝を誘導した際、CREBHのmRNA量は変化しなかったのに対し、タンパク量の増加を示した。その増加は未成熟型、活性型の2つの型の総和であり、特に活性型が増加した。高フルクトース負荷時、CREBHタンパクは糖鎖(O-GlcNAc)が付加されることでタンパク分解を回避する新たなメカニズムを見出した。高フルクトース負荷により、肝臓内の糖質は増加し、その糖質の一つO-GlcNAcがCREBHに付加された。CREBHへの糖鎖付加はO-GlcNAc transferase (OGT)により触媒され、O-GlcNAcase (OGA)により除去された。一方、O-GlcNAcの生合成経路であるヘキソサミン合成経路(HBP)を構成する酵素群の遺伝子発現はCREBH欠損で低下し、過剰発現マウスの肝臓では上昇した。これら酵素群は小胞体ストレス転写因子XBP-1により制御され、プロモーター領域には共通してXBP-1が結合するunfolded protein response element (UPRE) が存在することがすでに報告されている。これら酵素群がCREBHの新規標的遺伝子であることを見出した。高フルクトース食ではXBP-1の発現は変化しなく、この条件下ではCREBHがこれら遺伝子を中心的に制御すると考えられる。CREBH KOマウスの肝臓では高フルクトース負荷時に生じるOGTによる細胞内タンパクへの糖鎖付加の増加が減弱し、CREBHがHBPから糖鎖付加を制御することを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高フルクトース食負荷による脂肪肝の発症をCREBH KOマウスでは増悪化するが、そのメカニズムについて、糖・脂質代謝の制御の面から新たなメカニズムを解明しており、現在、論文化に向けてまとめている。
生活習慣病を誘導する食事を負荷したCREBHマウスの肝臓での遺伝子発現変化をRNA seqで網羅的に解析し、CREBH欠損による生活習慣病病態を悪化させる因子として、複数の遺伝子を同定した。マウス肝臓だけでなく、初代肝細胞で様々な栄養条件でそれら遺伝子の機能と病態との相関について解析を進めている。
マウス肝臓でのCREBHの機能を解析するために、CREBHの発現を組織特異的・時期特異的に操作するために必要となる肝臓特異的。薬剤誘導型Cre Tgマウスの作成がうまくいかなかった。そのため、新たに作成を開始したため、CREBHを時期特異的に発現操作する実験について、遅れが出ている。

今後の研究の推進方策

CREBH欠損による生活習慣病病態を悪化させる因子として、見出したミトコンドリアにおけるATP代謝に関わる酵素について解析を進めている。この遺伝子はCREBHにより発現が上昇し、KOマウスでは低下することから、CREBHの新規標的遺伝子と想定している。この酵素がミトコンドリアでのエネルギー産生にどのような機能を有するかを検証する。現在、この遺伝子の機能を過剰発現、ノックダウンし、実際にCREBHで観察される病態変化を説明しうるかを検証する予定である。
網羅的解析からCREBHはオートファジーに関連する遺伝子の発現を上昇させ、オートファジーを活性化することが想定されている。そのため、CREBH 欠損によりオートファジーが不活性化されると想定しており、その異常が生活習慣病病態悪化との関連を検証する計画である。CREBH KOマウスで観察される細胞内脂質蓄積が脂質を分解するオートファジーであるリポファジーによるものであるか、また、小胞体、ミトコンドリアのオートファジーであるERファジー、マイトファジーを介し、それぞれの細胞内小器官の機能異常をもたらした結果であるかを検証する。また、新規CREBH標的遺伝子として、ERファジーの律速遺伝子を同定している。その遺伝子の機能異常が代謝異常を引き起こすかも細胞、マウスレベルで検証する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] SREBP-1a による脂質合成の制御と食餌誘導性脂肪肝炎の病態2023

    • 著者名/発表者名
      木 雅弥、韓 松伊、大崎 芳典、松坂 賢、矢作 直也、関谷 元博、宮本 崇史、中川 嘉、島野 仁
    • 学会等名
      第55回日本動脈硬化学会総会・学術集会
  • [学会発表] 糖鎖修飾によるCREBHの活性化機構2023

    • 著者名/発表者名
      槌本 侑平、荒木 雅弥、鈴木 恭平、山田 泰成、齋藤 穂高、中川 嘉
    • 学会等名
      日本生化学会北陸支部第41回大会
  • [学会発表] 肝細胞・マクロファージにおけるSREBP-1aの生理機能解析2023

    • 著者名/発表者名
      荒木 雅弥、槌本 侑平、鈴木 恭平、山田 泰成、齋藤 穂高、室井 慎一、金 俊達、島野 仁、中川 嘉
    • 学会等名
      日本生化学会北陸支部第41回大会
  • [学会発表] Wogonin-ATF4 による Fgf21 の発現制御機構2023

    • 著者名/発表者名
      山田 泰成、齋藤 穂高、荒木 雅弥、槌本 侑平、室井 慎一、鈴木 恭平、金 俊達、中川 嘉
    • 学会等名
      第77回 日本栄養・食糧学会大会

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公開日: 2024-12-25  

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