研究課題/領域番号 |
21H04863
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松井 利郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (20238942)
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研究分担者 |
岩崎 克典 福岡大学, 薬学部, 教授 (10183196)
長岡 利 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (50202221)
道具 伸也 福岡大学, 薬学部, 教授 (60399186)
田中 充 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70584209)
津田 孝範 中部大学, 応用生物学部, 教授 (90281568)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 認知症 / in silico / アセチルコリン系 / ドッキング / LC-MS / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、食品因子による未病段階での認知症の改善・予防を実現することである。これにより、脳機能低下を未病段階で改善できる食品因子を予測・実践解明し、「認知症予防食品科学」を世界に先駆けて構築する。本年度は、構築した認知症予防食品因子を予測できるin silico生体膜モデル(7回膜貫通型受容体であるAdipoR1をホスファチジルコリンPC膜に仮想挿入したモデル)を用いて、リガンド候補ペプチドとの複合体を作成し、ジペプチドとしてTyr-Pro、トリペプチドとしてTyr-Pro-GlyおよびTyr-Pro-ProがAdipoR1に対してアゴニスト作用を示す可能性を示した。 次いで、直接的に認知症を改善できる、すなわちアセチルコリン系機能の維持、活性化を評価できる脳神経細胞系の樹立を試みた。その結果、脳幹細胞であるNE-4Cについて、1 microMレチノイン酸刺激(48時間)による神経細胞系への分化を達成した。 また、認知症進行を間接的に改善できる食品因子を網羅解明するため、体脂肪蓄積抑制・エネルギー代謝亢進の視点から認知症進行を「間接」予防する食品因子の検証を引き続き進めた。その結果、大豆タンパク質と運動の併用で相乗的に熱産生によるエネルギー代謝を促進する褐色脂肪細胞化を誘導することを明らかにし、さらに乳酸やフェルラ酸が単独で褐色脂肪細胞化を誘導することをその機構も含めて明らかにすることができた。また2型糖尿病モデルや運動条件と認知機能に関わる評価系を確立し食品因子との併用に関わる研究基盤を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構築したin silico法による膜貫通型受容体AdipoR1モデルを用いて最適リガンドペプチド3種類を選定できたこと、さらにはそれらの認知症予防作用を評価できる脳神経細胞の分化を達成できる誘導愛とその培養条件を樹立できたため。
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今後の研究の推進方策 |
認知力減弱を決定する神経伝達物質(アセチルコリン)の低下を防ぎ、アセチルコリン系を賦活させることが抗認知症ペプチドの必須生理機能の一つとなる。そこで、前年度までに構築したホスファチジル コリン(PC、リン脂質膜モデル)に膜タンパク質であるAdipoR1を仮想挿入したPOPCモデルを用いて、AidipoR1結合活性の強い活性ペプチドを釣り上げる。 また、経口投与したペプチドがそのままの形で到達するかどうかについての検証と、到達量、さらには脳実質での蓄積部位を誘導体化LC-qTOF/MS法により明らかにする。血中への吸収量についても同時に明らかにし、脳移行可能なペプチドを摂取した場合の生体利用性を明示する。 BBB透過ペプチドを長期摂取させ、行動学的に認知改善作用が認められた週齢において老化促進マウス(SAMP8)をと殺し、得られた脳について、アセチルコリン系関連因子の変動を測定し、in vivoでの認知症予防作用を明らかにする。 脳神経幹細胞NE-4C細胞を用いて、神経細胞への分化誘導を達成し、in vivoで作用が認められ、in silico解析によってAdipoR1への結合親和性が予測されたペプチドについて、AdipoR1を起点とするアセチルコリン系賦活作用を実証する。さらに、本系賦活に関わるシグナル因子を特定する。 「脳移行しなくても」糖代謝改善(AGEs産生抑制)、体脂肪蓄積抑制・エネルギー 代謝亢進によって認知症が予防できる食品因子として、乳酸に着目し、AdipoR高親和性ペプチドとの相乗作用について、細胞レベルで検討する。
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