研究課題
研究代表者らがこれまで世界に先駆けて解明してきた、TAGE蓄積と生活習慣病との関連について、さらなる科学的根拠を蓄積し、「TAGE原因説」の概念を確立するための研究を遂行している。令和3年度においては、以下の研究を実施した。【1】肝細胞障害:1)各種肝細胞を用い、TAGE前駆体のグリセルアルデヒド(GA)を添加する方法により、TAGE蓄積と細胞障害機序を比較した結果、ほぼ同様の影響が検証された(Biol. Pharm. Bull. 2021,44:1399)。2)ヒト細胞株を用いてGA耐性株の樹立を試みた結果、1株においてGA耐性を獲得していることが判明した(竹内、石垣、松永、研究協力者)。【2】心筋細胞障害:心筋細胞と膵島β細胞においては、TAGE蓄積に伴うオートファジー関連蛋白質の挙動の違いが見出され(Nutrients 2022,14:332)、TAGEを蓄積した心筋細胞は、特異的なオートファジー阻害を起こしている可能性が示唆された(竹内、研究協力者)。【3】神経細胞障害:神経細胞におけるTAGE化蛋白質として軸索伸長に関連するβチューブリンを見出した。そこで、GAによる軸索伸長への影響を調べたところ、GAはβチューブリンのTAGE化を伴う異常凝集を引き起こし、軸索伸長を阻害することを見出した(論文投稿準備中)(郡山、研究協力者、竹内)。【4】血管内皮細胞障害:不死化ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いてRasGRP2安定過剰発現株を樹立した(Sci. Rep. 2021,11:2959)(瀧野、研究協力者、竹内)。【5】小腸上皮細胞障害:hiPS細胞から実験に適した小腸上皮細胞への分化誘導条件を改良し、最適化を検証した(松永、研究協力者)。【6】TAGE蓄積抑制化合物の探索:TAGE特異的評価系を用いて、候補化合物の探索を実施し、数種の化合物を見出した(竹内)。
2: おおむね順調に進展している
研究は、当初の計画通りに進展している。
令和3年度の実績に基づき、令和4年度は以下の研究計画を継続して実施する。【1】肝細胞障害(金沢医大G&名古屋市大G):1)各種肝細胞を用いて、GAを添加する方法により、細胞内TAGE蓄積と細胞障害機序を継続して比較、検証する。併せて、細胞外TAGEが他の細胞に及ぼす影響も検証する。2)TAGE化蛋白質の分離・同定、及びTAGE化蛋白質に結合する細胞内因子を単離する(継続)。3)低濃度GA長期間暴露によりTAGE抵抗性の細胞株を作製し(継続)、親細胞との遺伝子発現を網羅的に比較、解析する。【2】心筋細胞障害(金沢医大G):1)心筋細胞を用いて、TAGE化蛋白質を分離・同定する(継続)。2)心臓線維芽細胞を用いた細胞内TAGE蓄積と細胞障害機序を解明する。併せて、細胞外TAGEが他の細胞に及ぼす影響も検証する。【3】神経細胞障害(鈴鹿医療大G):1)神経細胞/グリア細胞内TAGE蓄積と細胞障害機序の解明及びTAGE蓄積を抑える化合物を用いて、GA添加による神経細胞内異常重合蛋白質形成及び軸索伸長阻害効果を検証する。【4】血管内皮細胞障害(広島国際大G):1)血管内皮細胞及びRasGRP2安定過剰発現株を用いて、GA添加による細胞内TAGE蓄積と細胞障害機序を解明する(継続)。2)併せて、細胞外TAGEの影響を検証する。【5】小腸上皮細胞障害(名古屋市大G):1)hiPS細胞由来小腸上皮細胞を用いて、GA添加による細胞内TAGE蓄積と細胞障害機序を解明する。2)細胞外TAGEのhiPS細胞由来小腸上皮細胞及び腸管バリアに及ぼす影響を検証する。【6】TAGE蓄積抑制化合物の探索(金沢医大G):1)TAGE特異的評価系を用いて、候補化合物の探索を継続する。2)各種細胞にGAと候補化合物を添加して培養し、各種細胞に対するTAGE蓄積の抑制効果を評価する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (27件) (うち査読あり 27件、 オープンアクセス 18件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (4件)
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