研究課題/領域番号 |
21H04880
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
根本 香絵 沖縄科学技術大学院大学, 量子情報科学・技術ユニット, 教授 (80370104)
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研究分担者 |
Munro William 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子科学イノベーション研究部, 上席特別研究員 (50599553)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 分散型量子コンピュータ / 量子コンピュータアーキテクチャ / フォールトトレラント量子コンピュータ / 量子ネットワーク / 量子通信 |
研究実績の概要 |
分散型のフォールトトレラント量子コンピュータアーキテクチャの中でも、本年度においてはアイランド-インターコネクト型のフォールトトレラント量子コンピュータアーキテクチャについて、まずアイランド間をつなぐ通信の観点からの検討を行った。量子通信では、量子コンピュータとは異なるノイズが支配していると考えられるため、フォールトトレラントの設定では、量子通信間と量子コンピュータ間での量子情報のやり取りが非自明であり、この接続は量子誤り訂正符号間の変換という理論的な側面だけでなく、どのような実装が可能であるかというハードウエアの制約にも大きく依存することが整理された。 通信では、光の損失が大きな要因であることから、マルチプレキシングの有用性を数値的に解析し、そのリソースのオーバーヘッドを見積もると同時に、リソースの低減方法を検討した。光損失はインターフェースでの損失とともに、通信の距離に大きく依存する部分が容易に大きくなりうるので、距離によって量子誤り訂正符号の選択が変わるということもありうる。量子コンピュータアーキテクチャとして、量子コンピュータの距離をどのように仮定するべきかという点については、今後の量子コンピュータの発展とともに、量子通信の基礎デバイスである光と物質量子ビットのインターフェースの開発状況も考慮していく必要がある。 非同期制御の導入についての考察では、エッジ量子ネットワークを拡張して、フォグ量子ネットワークへ発展するというシナリオからの考察を行い、その技術的概要を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分散型の量子アーキテクチャの基礎として、分散を可能にするために必須となる量子通信の観点から多角的な検討を行った。量子通信の側からは、量子誤り訂正符号の選択や量子誤り訂正の拡張をハードウエアの観点からも行い、その利点やリソースについて多角的に検討することができている。また、量子通信と量子コンピュータとの論理量子ビット上でのやり取りには、複数の要素が絡み合っているが、基礎的な部分についての整理ができているので、今後の研究に有益な成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度考察した分散型の量子コンピュータアーキテクチャについて、引き続き解析を行う。トポロジカル量子誤り訂正符号の性質について、従来の表面符号との比較をしながら、アーキテクチャの観点から整理を進める。符号構造については、本年度は基礎的な成果があったので、アーキテクチャの観点からの議論を進める。例えば、カラー符号ではXとZの性質が異なるので、符号上の構造上の違いと実装系の特性との関係についての議論を進める。これをもとにゲート実装も含めた性質について議論し、アーキテクチャ上重要となる性質を抽出し、まとめる。 アイランド型のアーキテクチャについては、実装系の開発の方向性も見ながら進めることが望ましい。本年度は、実装系のロードマップが出揃ってきたところで、実装系の特徴によって目指すゴールが異なってきていることが明確になってきた。これらの研究開発のゴールと大規模量子コンピュータアーキテクチャとの量子コンピュータアーキテクチャ的及び技術的共通点と相違点について解析し、整理する必要がまずある。また、これまでの研究ではアイランドはかなり大きいと見積もられた。次年度は解析の前提を変えることで、これがどのように変化するのかについて分析する。 量子コンピュータと量子通信の融合について、比較的単純な量子誤り訂正符号について、論理量子ビット上の状態(情報)の特徴づけ、量子誤り訂正符号への実装上の負荷について議論する。次年度は、誤り率が異なる実装系が混合する場合に、量子誤り訂正の負荷がどのように変化するのか、また量子コンピュータアーキテクチャ上の改良による負荷の低減が可能かどうか等、違う性質の実装系が混合する場合の利点・負荷について検討する。
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